2022.05.07 08:00

日向坂46 渡邉美穂が語る、女優業への思いとグループ愛　「初心だけは忘れたくない」

文・取材＝中山洋平、写真＝牧野健人

あたたかい環境の中で活動させてもらっている

――今作の玲実を演じる上で苦労した点があれば教えてください。

渡邉：玲実は過去のトラウマが原因で、涙を流すことができないんです。自分の感情を上手く出せなくて、泣きそうになると、笑ってしまうんですよ。その感情を表現するのが本当に難しくて……本当は泣きたいのに笑ってしまうということは、これまで生きてきた中で経験したことがないし、誰かがそうなっているところも見たことがありません。何を参考にすればいいか、何が正解なのかがわからなくて、そこはとても悩みました。

――現場で坂本監督と話し合ったりは？

渡邉：本読みの段階で「そんな感じで」と仰っていただいたので、“できているってことなのかな”と思うようにしたんです。参考にするものがないのなら、今私が演じるものを正解にしちゃえばいいと思いながら、現場入りしましたね。

――委ねられたというか。

渡邉：本当にそうでした。これまでの現場に比べて、細かく言われることがなくて。今回は本当に任せていただけましたね。

――アイドル役ということで共感する部分もあったと思いますが、一方で所属する日向坂46は『NHK紅白歌合戦』にも3度出演するなど、アイドル界で目標とされるグループになりました。そういった今の現状をどう捉えていますか？

渡邉：本当に今、私たちはあたたかい環境の中で活動させてもらっていると感じています。だからこそ、人間なのでたまに気を抜いてしまうこともあるのかなって。でも一時の感情に流されないで、例えこれからどんな大きなグループになろうとも、初心だけは忘れたくないと思うんです。私たち2期生は先輩方に付いていきながらでしたけど、前進グループのひらがなけやき（けやき坂46）時代に葛藤してもがき苦しんでいた日々があるからこそ、今の日向坂がある。その気持ちは絶対に忘れてはいけないと思うんです。

――メンバー同士で確認し合うこともありますか？

渡邉：一度、年明けにメンバーだけで話す機会がありました。それこそその時は、東京ドーム公演を控えていた時期でしたけど、“私たちはドーム公演がゴールじゃなくて、あくまでも通過点。その先を目指していかなくちゃいけない。初心を忘れずにみんなで頑張ろう”と確認し合いました。なので、この気持ちはメンバー全員の根底に流れていると思います。

――日向坂46の強さを感じるエピソードですね。そんな日向坂には“獅子（しし）”を連想させるメンバーがいますね。

渡邉：加藤史帆さんですね（笑）。私も“しし”と聞いてパッと頭に思い浮かびました。

――渡邉さんと加藤さんは仲良しですが、ここ最近はどんな会話を？

渡邉：それこそ昨晩（※取材が行われたのは渡邉の誕生日当日）、「お誕生日おめでとー！」と自撮り動画が送られてきました。「美穂のお芝居はすごい好き」って言ってくれているし、私が女優業を頑張りたいことも知ってくれているので、応援してくれています。今は忙しくて、なかなか時間も取れないんですけど、コロナ前とかはよく2人で遊びに行ってたし、落ち着いたら、また“日向坂の眠れるしし”と遊びに行きたいですね。

日向坂46が目指すのは“国民の孫”

――今作では玲実として劇中歌「ひとりぼっちの革命」も歌っていますね。

渡邉：アニメのエンディングテーマのような楽曲で、振り付けも含めて、日向坂にはない雰囲気だと思います。

――“綿貫玲実名義”とはいえ、渡邉さんにとって初のソロ曲になりますね。

渡邉：そうですね。レコーディングは緊張しました〜。ひとりでレコーディングすることもこれまでなかったので、スタジオにいるみんなが私の歌声を聴いていると思うと、ドキドキしてしまいました。

――劇中にはライブシーンもあります。

渡邉：ライブハウスのステージでパフォーマンスしたんですけど、客席がガラガラという設定だったので、本気で切なくなってしまいました。“私の力じゃ埋められないのか……”と思ってしまって（笑）。

――実際だったら、チケット取れない人が続出すると思いますよ（笑）。今後も女優業に挑戦していきたいですか？

渡邉：挑戦していきたいですね。でもアイドルとしてたくさんのことを経験させてもらっていることは、私にとって強みになっていると感じています。それこそ、今回の役もアイドルをやっていなかったら、“歌って踊る”というのは簡単にこなせないと思うので、これまでの経験を演技に活かすことができて良かったです。

――日向坂46メンバーとして根底に流れる“初心を大切に”という精神は、仮にいつか卒業してひとりになったとしても、活きていくと思います。（※卒業発表前に取材を実施）

渡邉：そうですね。日向坂あってこその私だと思うので、グループのことはこれからも大切にしたいと思います。

――アイドルも多様化していて、それこそK-POPグループのクールさや、地下アイドルの泥臭い表現など、さまざまなカラーがあると思いますが、改めて渡邉さんはどんなグループを目指していきたいですか？

渡邉：そうですね。パッと一言で言うなら“国民の孫”みたいな。

――なるほど。

渡邉：“そういう存在になれたらいいね〜”って話はみんなとしています。お子さんからご年配の方まで、誰が見ても“元気をもらえる子たちだね”と感じてもらえるようになれたらなって。そうやってグループの雰囲気を保ちつつ、日々メンバーと一緒に頑張っています。

※記事初出時、一部に記述の誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

■放送・配信情報
『グッドモーニング、眠れる獅子』
ひかりTVにて配信中
出演：高岩成二、渡邉美穂
監督：坂本浩一
脚本：光益義幸
劇中歌：「ひとりぼっちの革命」（歌：渡邉美穂（日向坂46））
製作：アイキャスト、東映ビデオ、東映衛星放送
(c)2022「眠れる獅子」製作委員会
公式サイト：https://sites.google.com/view/goodmorning-sleepinglion