王子様とシンデレラのような山田涼介と芳根京子 『俺かわ』が切り込むナイーブな題材

『俺かわ』が切り込むナイーブな題材

 王道ラブコメディかと思いきや、実はかなりナイーブな題材に切り込んでいる。『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』(テレビ朝日系/以下『俺かわ』)は、“可愛さ=若さ”を武器にできなくなったあとの生き方を提示してくれる作品になるのではないだろうか。

 “若さ”というのは、たしかに尊い。たとえ失敗をしても、「若いからね」で許されて、先輩からは「可愛いね」とチヤホヤしてもらえる。ただ、それだけでは生きていけなくなる瞬間がやってくる。年を重ねて、後輩が増えた時、「時代は終わった……」と絶望感を抱いた経験がある人も、なかにはいるだろう。

 『俺かわ』の主人公・丸谷康介(山田涼介)も、そんなひとりだ。彼は、29歳になるまで“可愛い”を最大の武器に生きてきた。どこへ行っても「可愛い」と絶賛され、恋人は、「今日もビジュがいい!」「康介の顔が好き!」と褒めちぎってくれる。しかし、“おっさん”のお告げにより、その可愛いが持続しないことを知ってしまう。

 ファンタジー要素が強い設定ではあるが、一ノ瀬圭(大橋和也)のような若い後輩が入ってきて、自分のポジションが奪われてしまうのはよくあることだ。

 第2話でも、一ノ瀬の可愛さは全開で、康介はかなり押され気味。先輩の仕事を奪っておいて、「すみませんでした……。そんなつもりじゃなかったんです」なんて上目遣いで謝ってくるから、ズルい。それも、たくさんの人がいる前でだ。

 一ノ瀬は、空気が読めない場面が多々ある。サプライズの予定を本人にバラしてしまうなど、普通ではあり得ないことだろう。それなのに、「仕方ないなぁ」と許してしまいたくなるのが、一ノ瀬という男なのだ。一歩間違えば、“計算高い嫌な後輩”に見えていた可能性もあるが、大橋が纏う癒しオーラが反映されており、キャラクターが魅力的に映えている。

 康介がうまく行かなくなったのは、仕事だけではない。人気No.1受付嬢の恋人・森保莉子(鞘師里保)に、「(康介は)自分のことにしか興味ないんだよ!」とフラれてしまうのだ。“おっさん”のお告げから、何もかも一気に奪われていく。コメディ作品に強い山田涼介の表現力も相まって、クスッと笑える場面ではあった。

 しかし、彼女が別れを告げたのは、年を重ねて“好き”の定義が変わってきたからではないだろうか。若い時は、「顔がいい人がタイプ!」と思っていても、結婚を意識するようになると、それ以外の部分を重要視して考えるようになる。学生時代の康介を、「丸谷くんって顔だけだから」とフった女の子は、すでに感覚が大人びていたのだろう。

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