『イカゲーム』や『D.P.』に注目? 第58回百想芸術大賞受賞結果を大予想

第58回百想芸術大賞を大予想

 2022年も韓ドラファンにとっては祭りのような季節がやってきた。ノミネートが発表されてから5月6日の第58回百想芸術大賞の授賞式までの約1カ月を切り、この1年で誕生した数々のドラマを振り返りながら、受賞結果の予想を立て、結局「枠が足りない」となるまでが一連の流れだ。

 今年のノミネート作は、『イカゲーム』や『二十五、二十一』など日本でも話題の作品が多いため、百想への注目度も高いのではないだろうか。今回のコラムでは、「百想芸術大賞」とはどのような授賞式なのかを踏まえ、主要部門のノミネートを振り返りながら、それぞれの受賞予測を立てていきたいと思う。

1年のナンバーワンを決める、権威ある賞「百想芸術大賞」

 「百想芸術大賞」は、韓国の数ある授賞式の中でも、映画・テレビ両方を扱った唯一の総合芸術賞であり、長い歴史と信頼ゆえに「韓国の演技者たちが最も受賞したい賞」とも言われる権威ある賞である。年末に開催される各局の演技大賞のようにチャンネルごとではなく、地上波・ケーブル・Netflix配信などを含む全てのドラマが対象となるため、百想こそ1年のナンバーワンを決める、名実共に最高の授賞式とも言える。

 『愛の不時着』がノミネートを果たした2020年頃から、日本でも百想が爆発的な注目を集めるようになった。だが、『愛の不時着』はノミネートのみで、作品関連の賞の受賞に至らなかったことからも、「百想で受賞すること」がいかに高いハードルかということがわかる。この年は韓国内で高い評価を得ていた『椿の花咲く頃』が、テレビ部門大賞を含む4冠を達成し席巻。昨年は、サスペンスの名作と名高い『怪物』が作品賞、シン・ハギュンの最優秀演技賞を含む3冠を達成している。

 視聴率や話題性だけではなく“芸術性”の観点から、作品性と演技力を優先した選択がされるため、どんなに高視聴率を記録しても、世界で話題になっていても「作品性」が評価されなければ、受賞はもちろん、ノミネートにも至らないのが百想だ。その厳しい判断基準が近年韓国作品がここまで飛躍してきた所以であるとも言える。ノミネートされている全作品がまだ観れないというのもあり、日本を含む海外での人気や評価と、韓国内での評価の違いが顕著にあらわれる賞とも言えるかもしれない。

 さて、その点を考慮して考えたい今年のノミネートだが、世界を席巻した『イカゲーム』が8部門にノミネート、「歴代最高の史劇」とも名高い『赤い袖先(原題)』も7部門にノミネートされており、両作品の競争が予想されている。今年は百想が『イカゲーム』をどのように評価するかが鍵になりそうだ。

作品賞

『赤い袖先(原題)』(MBC公式サイトより)

『D.P. -脱走兵追跡官-』(Netflix)
『イカゲーム』(Netflix)
『二十五、二十一』(tvN)
『赤い袖先(原題)』(MBC)
『こうなった以上、青瓦台に行く』(wavve)

 さて、初っ端から予想が最も難しい作品賞。今年のノミネートは、『D.P. -脱走兵追跡官-』『イカゲーム』とNetflixオリジナルが2作品、wavveオリジナルの『こうなった以上、青瓦台に行く』と、OTTオリジナルコンテンツの躍進が顕著であり、日本でも話題性の高かった作品が名を連ねた。唯一日本で観ることができないのが、『こうなった以上、青瓦台に行く』だ。政治風刺を描くブラックコメディドラマで、韓国の映画雑誌『Cine21』が実施した映画評論家、テレビ評論家30人が選ぶ「2021年を輝かせた韓国ドラマシリーズ」にて、2位の倍近くの票を集め、堂々の1位に輝いている作品だ。

 今年の作品賞、脚本賞、演出賞など作品関連のノミネート作品をみると、サスペンス色が強かった昨年に比べ、『未成年裁判』『D.P.-脱走兵追跡官-』『こうなった以上、青瓦台に行く』と重いテーマを扱った社会派ドラマが躍進した印象だ。一方で『二十五、二十一』『赤い袖先』『その年、私たちは』といったロマンスドラマ復活の兆しも見えてくる。

 だが、まず作品賞を予想する前に、その上のテレビ部門の大賞を予想しなくてはならない。大賞は、 TV部門に含まれるドラマ・芸能・教養すべてが対象となる。各賞のノミネートの中から選ばれ、作品が受賞する場合もあれば、俳優・制作陣が個人で受賞することもある。

『イカゲーム』(Netflixにて配信中)

 これまでの受賞結果を見ても百想が極めて“作品性”を重要視することを鑑みると、大賞は、抜群の完成度を誇り、史劇でありながらも、今の女性の生き方にも通じる深いメッセージも投げかけた『赤い袖先』が受賞する可能性が高いと筆者は予想したい。『赤い袖先』が大賞を受賞するならば、作品賞はエンタメとして高い没入度を誇りながらも、軍隊の不条理と「傍観する社会」へのメッセージを投げかけた『D.P.-脱走兵追跡官-』の可能性が高いだろうか。もちろん大賞が『イカゲーム』(俳優のイ・ジョンジェ、ファン・ドンヒョク監督が個人受賞する可能性も)との見方もあるが、『赤い袖先』『D.P.-脱走兵追跡官-』の2作品が作品関連の賞を逃すというのは考えにくい。よって、『イカゲーム』は、演出や俳優関連の賞で受賞する可能性が高いのではないかと考えられる。いずれにせよ『イカゲーム』や『D.P.-脱走兵追跡官-』が大賞、もしくは作品賞受賞となれば、Netflixオリジナル作品として初の快挙となる。

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