『ちむどんどん』比嘉家の長男・賢秀の愛おしさ 一難去ってまた一難をどう乗り越える?
『ちむどんどん』(NHK総合)第8話は、比嘉家の長男・賢秀(浅川大治)の活躍と家族への優しさが光る回となった。賢秀を演じている浅川大治の豊かな感情表現を見ていると、自由奔放だが誰よりも家族思いの賢秀の優しさがひしひしと伝わってくる。
運動会のシーンでは、妹たちの思いに共鳴するような姿が印象に残る。アクシデントに見舞われ、暢子はあっけに取られた表情で「まさかやー……」と声をあげていたが、賢秀も思いは同じだった。賢秀は暢子(稲垣来泉)が転んだとき、普段なら「アキサミヨー」と叫びそうなところで「ええっ」と頭を抱え、島袋(吉田日向)がからかう横ではポカンとしたまま。この出来事がどれだけ予想だにしないことだったかがうかがえる。良子(土屋希乃)が走るシーンでは、普段は良子とケンカしてばかりの賢秀が、まるで自分が走っているかのように前のめりになって応援していたのが心に残る。
そしていよいよ自分が走る番だ。浅川の顔が大きく映し出されたとき、気合の入った表情はいつも以上に凛々しく、別人になったかのよう。とはいえ「俺はアベベだ〜!」とズックを脱ぎ捨てるのびやかな姿と妹たちの声援に自信たっぷりの笑顔で返す姿は、普段通りのニーニーだ。「宇宙パワー!」と叫びながらゴールしたり、「俺がやんばるの一番星ヤサー!」と高らかに叫んだりと調子の良さは人一倍だ。
浅川が感情を一つ一つ丁寧に汲み取って、率直に演じる賢秀に愛おしさを感じる。浅川のまっすぐさは、賢秀の怒りにも表れ、高校生を連れ立って現れた島袋が母・優子(仲間由紀恵)をけなしたとき、「謝れ! お母ちゃんを笑うな! 謝れ!」と突き飛ばす。島袋を睨みつける浅川の目つきや「俺の妹に、手出すな!」という力強い声色には家族を大事に思う賢秀の気持ちが感じられる。賢秀は、頭に血が上りやすいのは確かだが、ただの荒くれ者にならない。
良子が訴えてもなかなか行動しなかった賢秀だが、母が倒れたと知ると一目散に駆けつけた。一家の大黒柱である賢三(大森南朋)が亡くなり、懸命に働いてきた優子だが無理がたたったのだろう。一難去ってまた一難といった状態だが、運動会で家族の絆はより深まっている。すぐに暮らしむきを変えることは難しいと思うが、4兄弟が母を支える展開に期待したい。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK