『持続可能な恋ですか?』は現代に寄り添う 上野樹里と考えたい“誰かと共に生きること”

上野樹里と考えたい“誰かと共に生きること”

 誰もが、人生の開拓者となった現代。ドラマで描かれるキャラクターたちの生きざまが、考えるヒントになる。本作では、杏花が一緒に暮らす父・沢田林太郎(松重豊)の存在がいいアクセントになってくれる気配がする。辞書の編纂をする日本語学者という特殊な職業の林太郎は、365日言葉のことを考える、いわば日本語オタク。

 言葉を観察する林太郎を通じて、新しい言葉が飛び交うほど“時代の空気”のようなものが見えてくるのがわかる。「持続可能」が叫ばれるということは、持続不可能なムリを誰かが強いられている。「環境にやさしい」を呼びかけるということは、環境よりも何かを優先したツケがあるのだとわかる。そして、もしかしたら「自分らしく」という言葉がもてはやされるほど、無個性が量産される風潮にあるのかもしれない。

 きっと意味のないように感じる会話にも、その根底には常日頃感じているものがにじみ出ているはずなのだ。そう思うと、この父娘が挑む人生のパートナーを探す「ダブル婚活」という新しいフレーズにも、なんだか新しい時代の香りがするではないか。

 最愛の伴侶を亡くした後も続く人生において、あるいは自分自身を確立させようともがく日々において、「誰かと共に生きる」とはどういうことなのか。1人でも生きられる社会にはなったけれど、独りで生きていくには不安も多い。だからといって、メリットやデメリットだけで割り切れるほど、私たちは合理的にはできていない。計算通りにはいかない人生における「自分なりの幸せ」と向き合う作業を、父娘で「ダブル婚活」という強硬手段で進めていく姿は実に新鮮な手段だ。

 そして杏花と林太郎のもとには、息子が第一のシングルファーザー・東村晴太(田中圭)、杏花との18年ぶりの再会にグイグイとアプローチしていく幼なじみ・不破颯(磯村勇斗)、そして時間も経済力も手に入れた40代の今こそパートナーを探し始めた医師・日向明里(井川遥)と、様々な背景を持った人物たちも登場する。それぞれ異なる視点からの恋の始まり方、幸せの捉え方にも注目していきたいところだ。

 「持続可能」で、「周囲にやさしく」、「自分らしい」、そんな生き方を彼らは見つけられるのだろうか。そして、そんな結婚行進曲を見つめる私たちも、それぞれの「幸せ」について、改めて自分の言葉に落とし込むことができるのか。沢田父娘と共に向き合っていこうではないか。

■放送情報
火曜ドラマ『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』
 TBS系にて、4月19日(火)スタート 毎週火曜22:00~22:57放送
出演:上野樹里、田中圭、磯村勇斗、ゆりやんレトリィバァ、井川遥、水崎綾女、清水くるみ、武田玲奈、鈴木康介、松重豊、鈴木楽、柚希礼音、八木亜希子
脚本:吉澤智子
演出:土井裕泰、山室大輔、小牧桜、加藤亜季子
プロデュース:中島啓介、吉藤芽衣
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/jizokoi_tbs/
公式Twitter:https://twitter.com/jizokoi_tbs
公式Instagram:https://www.instagram.com/jizokoi_tbs

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