『鎌倉殿の13人』佐藤浩市、最も頼りになる者の切ない最期 「頼朝嫌い」がトレンド入り

『鎌倉殿の13人』上総のあまりに切ない最期

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第15回「足固めの儀式」。鎌倉では御家人たちが謀反を計画していた。謀反には上総広常(佐藤浩市)も加わり、御家人たちは自分たちには目もくれず都ばかりに目を向ける源頼朝(大泉洋)の失脚をたくらむ。

 第15回は、広常を演じる佐藤浩市の演技に心が締め付けられる回となった。頼朝と大江広元(栗原英雄)は「最も頼りになる者は、最も恐ろしい」と広常の存在を脅威とした。確かに、佐藤演じる広常には他の御家人たちとは違う圧倒的な風格があった。

 実は広常は北条義時(小栗旬)の頼みで反頼朝派の御家人たちの誘いに乗っている。頼朝側の手先だと察知され、捕らえられてしまう梶原景時(中村獅童)とは違い、広常が義時と通じていることは誰にも気づかれていない。それどころか坂東武者たちは、坂東の地を取り戻そうと躍起になりながらも、広常の言葉には素直に耳を傾け、受け入れる。和田義盛(横田栄司)が景時に刀を抜いたとき、広常は「そいつも坂東武者じゃねえか」とたしなめた。義時が必死に説き伏せたことで事が収まったときには「そうと決まったら解散だ」とその場を丸く収めた。そのとき誰も広常に疑いの目を向ける者はいなかった。御家人たちをまとめる力があるということが十分に伝わってくる。

 そんな広常だが、それなりに自分の立場に重圧を抱えていたのかもしれない。謀反の企てを進める御家人たちが沸き立つ中、佐藤はやや緊張した面持ちでその様子を見つめていた。広常の表情が大きく映し出される度、彼はため息をつく。考えてみると、あえて敵方につくというのは、豪放で荒々しく、自分の感情に素直な広常らしくはない。忠誠を誓った頼朝のためにも重要な役割を果たさなければならないという彼の緊張感が伝わってきた。

 だからこそ、頼朝から酒の席に招かれたときの笑顔は印象的だった。頼朝から面と向かって「そなたがいるから今のわしがおる。これからも頼むぞ」と言われ、広常は顔をほころばせた。佐藤の見せた照れるような表情は、これまでにない柔らかなものだった。忠義を尽くす相手から頼りにされることがこの上なく光栄なことなのだと伝わるほどに。

 しかし広常の命は、頼朝が政権を樹立するための礎石として奪われることになった。義時は強硬に抗議したが、運命を変えることはできなかった。佐藤の表情の変化が、御家人をまとめるために罪を背負わされた広常の非情な運命を際立たせる。突如として景時に斬りつけられた広常の茫然とした顔。

 すがるように義時に近づくも、身動ぐこともできない義時をじっと見つめる広常の表情は心苦しい。「武衛! 武衛!」と頼朝の足元に駆け寄るが、頼朝は冷たい目で彼を見下ろすのみ。頼朝を見る佐藤の表情は悔しさ、無念さに満ちている。その後、激しい怒りへと変わるかという瞬間に広常は胸を突き刺され、その表情は苦悶に歪む。自分のために涙を流す義時と目が合った広常は、全てを察したのか、ふっと微笑んで絶命した。忠誠を誓ったはずの頼朝に殺される絶望。頼朝と義時を見る佐藤の表情は終始、表現しがたい悲しみに満ちていた。“最も頼りになる者”のあまりにも虚しい最期だった。

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