『カムカムエヴリバディ』勇さんの涙、虚無蔵の晴れ舞台…… “続けてきた者”への人生賛美

『カムカム』“続けてきた者”への人生賛美

 五十嵐(本郷奏多)からまさかの“告白”を受けたひなた(川栄李奈)。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)はヒロインに焦点を当てつつも、特にるい編以降は群像劇的に物語が進んできた印象だ。だから、三代目のクライマックスまでくるとこれまでに登場した人物らの人生をも取りこぼさないように丁寧に拾っていく。その良さが溢れんばかりの第106話は、“続けてきた者”への人生賛美のような回だった。

「日々鍛錬し、いつ来るとも分からぬ機会に備えよ」

 『カムカムエヴリバディ』はひなた編に入ってから、特にこの“継続すること”に焦点を当てる場面が多かった。ひなたの夏休みのラジオ体操に宿題、るい(深津絵里)のあんこ作りにラジオ英会話、そして虚無蔵(松重豊)の鍛錬……。ついにキャスティングが発表され、制作開始となった『サムライ・ベースボール』で、桃山剣之介(尾上菊之助)はマット・ロリンズ(マイケル・キダ)演じる主人公がタイムスリップしてきた藩の藩主を演じる。そして、そんな彼が最も信頼している無口な家老役を演じるのが、虚無蔵なのである。

 「虚無さん、まぶしいでしょう。暗闇にいたんじゃあ、見えないものもあるんですよ」と声をかける剣之介。その2人を見守りながら男泣きする、『棗黍之丞』シリーズに携わってきた轟(土平ドンペイ)。あの大部屋役者の虚無蔵が大スター、剣之介と肩を並べてフラッシュを焚かれる姿には、私たちもグッときてしまう。ここにいる全員が、“続けてきた”からこそ得た輝きなのである。すみれ(安達祐実)も小さいながらに映画で役をもらっていた。一時期キャリアが低迷した彼女もまた、自身のプライドを捨ててまで“続けること”を選んだからこそ、後のヒットシリーズやハリウッド作品への出演を手に入れたのだ。みんな、頑張ってきたから。

 継続の努力が報われたのは、条映の者だけではない。千吉(段田安則)から雉真繊維を早々に継ぎ、より事業拡大しても彼の遺言通り足袋だけは作り続けた勇(目黒祐樹)も、『サムライ・ベースボール』の衣装部から足袋の製作を依頼されることに。安子編が始まった本当に最初の頃に、稔(松村北斗)が「いつか雉真の製品を欧米と取引できるようにしたい」と言っていた、その夢が叶った瞬間だった。その感慨もひとしおで、勇の涙にこれまでの全ての努力と人々の想いが詰まっているように思えた。今回は本当に、“いい男泣き回”と言っても過言ではないだろう。

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