『カムカム』「これが人生」と噛みしめる格好いいひなた “あの頃”と違った文ちゃんの告白
「日々鍛錬し、いつ来るともしれない機会に備えよ」
虚無蔵(松重豊)の言葉を信じて、別れの悲しみを断ち切り、それぞれの場所で鍛錬を重ねてきたひなた(川栄李奈)と文四郎(本郷奏多)。その成果が10年の時を経て、ようやく試される時がきた。しかも、青春時代を共に謳歌した“映画村”という場所で。
『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第105話では、成長を遂げた2人がサムライの精神を教えてくれた人生の祖とも呼べる虚無蔵を陰から日向へ導く。
鍛錬を忘れぬために常日頃から着流し姿で侍言葉を喋り、愛する時代劇を救うべく後進育成に励んできた虚無蔵。その実、自身が陰に潜んできたのは、セリフがうまく喋れないばかりに初代モモケン(尾上菊之助)と共演した映画を不発に終わらせてしまった過去に囚われているからかもしれない。20年越しに二代目(尾上菊之助/二役)によって初代が虚無蔵を役者として高く評価していたことを知り、憑き物が落ちたような表情を浮かべていたが、自分は“名も無き有象無象の一人”という認識は変わらなかったのだろう。しかし、どんなに小さな役でも彼が日々鍛錬し、培い、身につけた力は、遠いアメリカの地でハリウッドのキャスティングディレクターであるアニー(森山良子)の目に留まった。
「誰よりも一番、侍というものを体現しているのは伴虚無蔵だと思います」
「侍なら時代劇を救ってください!」
自分が時代劇スターの夢を諦めたからこそわかる俳優・伴虚無蔵の偉大さを伝える文四郎と、それを英語に表すひなた。まさに総力を挙げた“弟子”の言葉と、アニーの美しい座礼に心動かされた虚無蔵は、ついにミラー監督(リー・スターク)の前で演技と殺陣を披露する。その場所は、かつて映画『妖術七変化』リメイク版の御前芸比べで虚無蔵と文四郎がペアとなって殺陣を披露した道場。今度は文四郎ではなく虚無蔵が敵役を演じ、その見事な斬られっぷりにハリウッドの撮影チームからは拍手喝采が巻き起こった。「解せぬ」と言いながらも、どこか嬉しそうな虚無蔵。もう有象無象などではない。“条映の秘蔵っ子”と謳われた日から約40年、世界中が注目するスクリーンの中で再び名前のある役で登場する彼を見るのが楽しみだ。