『カムカムエヴリバディ』勇さんの涙、虚無蔵の晴れ舞台…… “続けてきた者”への人生賛美

『カムカム』“続けてきた者”への人生賛美

 そして、もうひとり、努力が報われそうな男がいる。錠一郎(オダギリジョー)だ。ツアーの帰りにジャズ喫茶「Dippermouth Blues」に立ち寄ったトミー(早乙女太一)と錠一郎。2人は健一(世良公則)から地元のクリスマス・フェスティバルに出てくれないかと頼まれる。2人が若かりし頃、最大のバトルを繰り広げたサマー・フェスティバルをつい思い返してしまうが、すかさず告げられた会場に思わずドキッとさせられる。それは、安子(上白石萌音)とロバート(村雨辰剛)が、定一(世良公則)が飛び入り参加で歌った「サニーサイド」を聞いた場所であり、錠一郎がジャズに出会った場所だった。全てが巡り巡る。これもまた、トミーがトランペットを吹き続けたおかげであり、錠一郎がトランペットを吹けなくなっても「音楽の道」を諦めなかったからこそ辿り着けたことなのである。

 クリスマス・フェスティバルの話を聞いて、少し表情を曇らせたるい(深津絵里)にトミーが気づく。ロバートと安子にとって大切な日で、家で留守番していた自分はお土産の菓子をクリスマスプレゼントとしてもらった記憶のある、あのクリスマス。そりゃあ、複雑な気持ちになるだろうと思いきや、るいの心は“自分の過去”に向いていなかった。

「トミーさん、こんなこと贅沢なのはわかってるんですけど、トランペット吹かせたかった。特別な会場に錠さんのトランペットが響き渡るの聞かせたかった」

 アメリカで酔っ払って歌った「サニーサイド」も、クリスマス・フェスティバルも、トラウマだったはずの過去が、彼女の中では希望を託したい未来に変わっている。そんな日々の努力や祈りが、いつかは叶うと信じたい。毎日「おいしゅうなれ」と願いながら、時代を超えても美味しくなり続けた「たちばな」のあんこのように。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK

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