宮沢りえ、江口のりこ、小池栄子、新垣結衣 『鎌倉殿の13人』を引き締める女性陣の好演

『鎌倉殿の13人』を引き締める女性陣の好演

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第12回「亀の前事件」。政子(小池栄子)の出産も間近になり、源頼朝(大泉洋)の前に北条時政(坂東彌十郎)や上総広常 (佐藤浩市)など鎌倉殿の中核をなす豪族たちが揃う。皆がこぞってなりたがっている赤子の乳母夫には頼朝の乳母である比企尼(草笛光子)の養子・比企能員(佐藤二朗)が指名された。

 第12回は、政子が男子を授かるというめでたい出来事がありながら、鎌倉殿を取り巻く女たちの嫉妬と怒りがありありと感じられる回となった。

 特に、政子に亀(江口のりこ)の存在を告げ口したりく(宮沢りえ)に着目したい。

 第12回に限らず、都出身のりくの言動には彼女のプライドの高さが感じられる。たとえば頼朝に仕える夫・時政の処遇について不満を漏らしたり、頼朝の妻として権威を増す政子を一方的にライバル視したりといったところだ。とはいえ、宮沢演じるりくはとてもチャーミングだ。一般に「悪女」と称されるりく(牧の方)だが、宮沢の演技には競い合う姿勢は見えても、そこにどす黒い感情があるようには思えない。平家を倒せば都に住めると期待するりくが夫の武勇の心を焚きつける姿には「悪女」の片鱗がうかがえるが、現時点での宮沢の演技ではりくが純粋に張り合っているように見え、女同士の諍いがドロドロしすぎないのが印象的である。

 りくは北条家の待遇に不満を持っている。「北条の家は誰が継ぐんですか?」という実衣(宮澤エマ)の素朴な疑問には「私が男子を産めば、もちろん、その子が」と口を挟み、出産が近づいた政子が比企の館へ移されるときには「私の時と随分扱いが違うじゃありませんか」と口をとがらせる。顔をくしゃくしゃにして「偉そうに」と政子をやっかむ宮沢の表情はどこか愛らしくもある。りくの行動は大人げないのかもしれないが、頼朝に寄り添う亀が八重(新垣結衣)を揶揄するような物言いをするのを見た後だと、つい応援したくなるような健気さも感じられる。

 亀の存在を知り、政子を焚きつけるりくはとても楽しそうだ。政子に後妻打ち(うわなりうち)を提案する宮沢の表情はイキイキとしている。兄・牧宗親(山崎一)と話す宮沢の無邪気な笑顔はまるで少女のようだった。亀の館を打ち壊すことについて「大ごとにはしたくないので。ちょっと」と念押しするときに見せた茶目っ気たっぷりのウインクが印象に残る。最終的には亀の館は全焼して大ごとになってしまうのだが、政子と頼朝をほんの少しだけ懲らしめたかったりくの思惑は伝わってきた。

 宗親は頼朝の怒りを買い、髻を切られる。りくは黙っていられず、御所へと乗り込んだ。りくの怒りは兄への仕打ちに対するものだけではない。事の発端は頼朝の女癖の悪さにある。りくはそのことを正々堂々と指摘した。りくは頼朝に「下がれ」と言われても引かない。

「夫にそばめがいて、それを心より許せる女など都にだっておりません」
「懸命に御台たろうと励んでいる政子が哀れでなりませぬ!」

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