『39歳』“不都合な真実”を避けてばかりはいられない人生 終わりに向かうチャニョンに涙

『39歳』ついに両親に告げるチャニョン

 “現実であってほしいことが夢”で、“夢であってほしいことが現実”の中にいる20年来の親友チョン・チャニョン(チョン・ミド)、チャ・ミジョ(ソン・イェジン)、チャン・ジュヒ(キム・ジヒョン)。ミジョが吐き出した「人生いろいろだよね」の言葉。嬉しいこともあれば悲しいこともあるの意味ではなく、「うまくいかないことばかりね」という嘆きが響き渡った、Netflixで配信中の韓国ドラマ『39歳』の第7話と第8話。

 親友に彼氏ができたら、その彼に「彼女を大事にしてね」などと声をかけるものだろう。だが、チャニョンはミジョの恋人のキム・ソヌ(ヨン・ウジン)に「ミジョと遊んであげて」と伝える。自分がいなくなったら遊び相手がジュヒしかいなくなるミジョに、恋人としてだけでなく“友達として”も代わりになってほしいとの頼みなのだろうか。チャニョンは、ミジョやジュヒが悲しみを乗り越えるための準備をしているかのようだった。

 俳優を目指していたはずが、いつの日か指導者側になっていたチャニョンは、「あと1人だけ指導したら辞めよう。そう繰り返しているうちに39歳になってました」とオーディション会場で語る。私たちは流れる日々に置き去りにしているものがあまりにも多い。それは「いつかやろう」と、そこに未来が前提にあるからだ。たとえ今日ここに置いてきても、明日はやってくるものだと思っている。チャニョンが置いてきものは、俳優になる夢。そして、明日や未来にその“夢”を持っていかないと決めたのだ。

 緊張しながら煌めくチャニョンの表情、心配で仕方ないミジョやキム・ジンソク(イ・ムセン)の微笑ましい姿、オーディションの合格を自分のことのように喜ぶジュヒの声。思い描いた画が完成したと思ったら、すぐに消されてしまう現実が待っているだなんてやりきれない。だからといって、「後悔のない人生を送った」と言い切れる人はどれだけいるだろうか。いや、言い切れるものなのだろうか。確信が持てないから、後悔しないようにその瞬間瞬間の小さな選択を積み重ねていくしかない。

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