『39歳』で描かれる幸運と悲運の対比 悲しみは一人で背負うものではない

『39歳』で描かれた幸運と悲運の対比

 世界の総人口は何十億人を超える。何十億通りの人生があって、何十億通りの1日がある。今日という1日が誰かにとっては最高の日であり、また他の誰かにとっては最悪の日になり得るのだ。けれど、20年来の親友3人の誰かが750万ウォンの宝くじに当選した日と余命宣告された日が同じだなんて。Netflix配信中の韓国ドラマ『39歳』の第3話・第4話ではそんな皮肉さも描かれた。

「そんなことは起きない」

 チャ・ミジョ(ソン・イェジン)の口から出る台詞は、どれも願掛けのようだった。ステージ4のすい臓がんである検査結果をチョン・チャニョン(チョン・ミド)になかなか伝えられずにいるミジョ。思い返すのは、かつて唐突に始めたジャンケンのこと。負けたチャニョンに「私とチャン・ジュヒ(キム・ジヒョン)の葬儀はチャニョンに任せる」と、3人の葬儀を誰が担当するかの話をしていた。チャニョンが長生きすることを願い、病気なのは何かの間違いであってほしいと自分に言い聞かせるように、彼女はそれを思い出した。だからこそ、このタイミングでチャニョンに「人生は長くない」と言い放ったキム・ジンソク(イ・ムセン)の妻ミンジ(カン・ソンジュ)を、ミジョは許せなかったのだ。それは、チャニョンに残された時間が短すぎるという現実を突きつける言葉だったから。

 取り乱したミジョを見たキム・ソヌ(ヨン・ウンジ)は「僕たちの年代であれほど悲しむ理由は何か」と疑問に思ったはずだろう。それほど“死”というものが、まだその年代にとって遠い先であることを意味する。39歳にもなれば、大体のことを受け入れられる器ができて、スマートな対応ができる。多少取り乱しても軌道修正できるし、物事の見通しがつくからリスク回避もできる。つまり、何が起きても大抵のことは乗り越えられる術を知っているのだ。けれども、“死”は......? ミジョが「生と死と向き合うにはまだ未熟だった」と表現したように、彼らにはそれがあまりにもまだ早く、唐突で、立ち尽くすしかないことだった。このドラマのタイトルが『39歳』という理由は、ここにあるだろう。

 誰かを支えるためには、支える者もまた誰かの助けが必要だ。深い悲しみに明け暮れていたミジョに、決して線を越えない優しさで寄り添い、笑顔と安らぎを与えてくれたのはソヌだった。そして、ミジョを支えたのはソヌだけではない。ミジョは7歳の頃に養子となったが、血の繋がった本当の家族が何なのかを知らないと話していた。しかし、目の前で苦しむミジョをすぐさま強く抱きしめる姉や両親を家族と言わず、なんと呼ぼう。辛い時こそ自分の味方が誰なのか、気づけなかったあたたかさを思い知らされる。

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