“女の友情”はなぜ続かない? 『39歳』から考える、女性の一生と孤独との闘い

『39歳』が描く、女性の一生に漂う“孤独”

 ドラマが世相を映す鏡。だとするならば、ついに向き合う時がきたということかもしれない。女性の一生は、孤独との闘いだということを。

 現在、Netflixで配信中の韓国ドラマ『39歳』。10代の終わりから39歳まで、3人の女性が紡いできた友情をメインに描いたドラマ。そう聞いて『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)のようにワチャワチャとした微笑ましい時間が始まるのかと思っていた。

 似合う服も、使う化粧品も、仕事上の立場も……年を重ねて徐々に自分の暮らしが変わったことは自覚するものの、古くからの友人に会えばすぐに出会ったころのように笑い合える。そんな変わらない日々が続く様子に、視聴者の私たちも青春時代の面影のようなものを共に楽しむのだとばかり思っていた。

 だが、すぐに漂ってきたのは、そのうちの1人がそう遠くない未来にこの世を旅立つという死の香り。「まだ早いよ」と不意を突かれる展開だ。だが、いい大人になってもはや「知らなかった」とは言えない。どんなに愛しい時間も永遠ではないのだ、と。

続くだけでも奇跡的な“女の友情”

 振り返れば、30代ともなれば多くの人と出会い、そして別れてきたはずだ。そのなかで、10代から繋がっている友人なんて本当に片手に収まるくらいだろう。あるいは「いない」という人も決して珍しくないのではないか。

 「女性の友情は儚く脆い」そんな言葉があるのは、それだけ人生に分断のタイミングが多いからだ。仕事を頑張るのか、結婚を念頭にキャリアを考えるのか。「女の子なのだから」と、生まれ育った環境によっては教えられる価値観もバラバラだ。考えてみれば、毎月の生理の重さだって人それぞれ異なる。「同じ」とされながら、全然「同じじゃない」ことが多すぎるのだ。

 よく女性は「共感を求める生き物」とも言われる。それは裏を返せば、それほど孤独感に包まれる人生だからかもしれない。就職、結婚、妊娠……分断されるたびに「◯◯友」と名のつく人間関係を築こうとする女性が多いのも、驚くほど細かく分岐を繰り返していく女性の“人生を生き抜く”知恵だ。

 だからこそ、このドラマで描かれるような「友人歴20年以上」といった変わらぬ関係性がひときわ眩しく感じられるのだろう。何度も訪れたであろう人生の分岐点にも、揺らぐことのなかった友情は、どんなに欲してもすぐに手に入るものでもない。

 皮膚科医院の院長となったチャ・ミジョ(ソン・イェジン)。女優から演技指導者になったチョン・チャニョン(チョン・ミド)。デパートの化粧品セールスマネージャーを務めるチャン・ジュヒ(キム・ジヒョン)。進んだ業界が違えば、勤務時間も休日のシフトもバラバラだ。「忙しいだろうから」「休みは恋人といるはず」と、現実ではなかなか会うこともままならなくなりそうなところ。

 だが、彼女たちは頻繁に連絡を取り合い、お互いの家を行き来して、この友情を何よりも大事にしてきた。それは時として、恋愛よりも優先順位が高い。それほど仲のいい女3人組であっても、ときには2人:1人となってしまい「私には言ってくれないの?」なんてちょっぴり孤独を感じる場面もあるのだから、やっぱり女の友情はそれだけで奇跡の物語なのだ。

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