『二十五、二十一』心地よさの正体は“距離感”? 説明のいらないヒドとイジンの関係

『二十五、二十一』ヒドとイジンの関係とは

 本作に心地よさを感じる理由は、“距離感”にあるだろう。イジンはヒドの気持ちを知った後も押し進もうとはしなかった。これまでも、いつもヒドの言葉をヒドからの行動を待ってくれていた。また、両想いでも告白する勇気が出ないムン・ジウン(チェ・ヒョヌク)と告白を待っててくれるユリムの間にも微笑ましい穏やかな時間が流れている。普段は全力で突っ走るのに好きな人とはゆっくりと並行に歩むギャップと、その距離感にもどかしさを感じさせない演出に毎度、心が満たされるようなあたたかいため息がもれてしまう。

 さて、修学旅行に参加したことがないヒドとユリムのために海に行く計画を立てたイジン。ジウンとチ・スンワン(イ・ジュミョン)も加わり、「夏だ! 海だ!」と文句なしの最高なシチュエーションだ。しかし意外にも、広がる青い海と切りたてのスイカを片手に語られたのは、それぞれの“痛み”だった。母親に失望されているジウン、さらに借金を背負うことになったユリムの家庭、父親を亡くしてから思い出も語れないヒド、人生がつまらないから色々試していると話すスンワン。ここでは語られてはいないが、イジンは職場で“高卒記者”のレッテルを貼られ耐え続ける日々だ。

 それでも、日が沈んでいく薄いピンク色の空と水色の海のグラデーションがかった景色を目の前にすれば、「私たちがこの夏の主人公になるの」と叫ぶヒドに頷きたくなる。この時間が永遠に続かないとわかっていても「永遠になるさ」と返すイジン、「そう願おう」と望むヒドに思いを重ねたくなる。

 大人になったヒドは海に行った思い出を忘れていた。ガッカリする娘のキム・ミンチェ(チェ・ミョンビン)に「一瞬で消えるものも悪くはない」とヒドの顔は満足そうだ。たとえ忘れたとしてもその瞬間があったのは事実で、美しい思い出の数々が自分を支えてくれていると知っているからだろう。ヤン・チャンミ(キム・ヘウン)コーチの「笑えば忘れられる、忘れてこそ生きる」の言葉も同じことだろう。私たちはきっと、そうやってここまできて今を生きているのだ。

■配信情報
『二十五、二十一』
Netflixにて独占配信中(毎週土・日曜に新着エピソード配信)
原作・制作:チョン・ジヒョン、クォン・ドウン
出演:キム・テリ、ナム・ジュヒョク、キム・ジヨン、チェ・ヒョンウク、イ・ジュミョン
写真はtvN公式サイトより

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