『カムカム』五十嵐が身も心も“落ち武者”に 暗闇の中では眩しすぎたひなたの笑顔
だが、五十嵐は違った。ひなたを抱き寄せると「どうしてお前はそんなにバカなんだよ」。嗚咽がもれて、涙が止まらない五十嵐。「バカで明るいお前が大好きだ。だから、もう一緒にはいられない」。怪訝そうに見つめるひなたに「もう傷つけたくない。傷つきたくない。ひなたの明るさが、ひなたの放つ光が、俺にはまぶしすぎるんだ」と別れを告げた。
五十嵐は弱っている。どん底の五十嵐は夢の重みに耐えられず、暗闇に慣れすぎて身近にいるひなたの笑顔も目に刺さる。時代劇セットの冷たい廊下や泥だらけの地面に伏している間に、五十嵐は身も心もすっかり落ち武者になり果てていた。それでもひなたを幸せにしたい気持ちはあって、五十嵐なりに考えて出した結論が役者を辞めることだった。一方、侍の女房として浪人の夫を支える覚悟だったひなたに、五十嵐の言葉は不本意なものとして響く。
「傷つけたくない」のも「傷つきたくない」のも本音だが、それらが結果として、ひなたを傷つけることになってしまうのは皮肉である。それもすべて2人の「好き」という感情から発していて、はたから見れば、一恵(三浦透子)が言うように「あほ」に見えるのも仕方ないことではある。誰もがみんな榊原(平埜生成)のように、自分の思いを心の奥にしまっておけるわけではないのだ。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK