『アンチャーテッド』北米興収1位に トム・ホランドは観客を呼べる新世代スターになるか

トム・ホランドは観客を呼べる新世代スター?

 『スパイダーマン』シリーズでおなじみのトム・ホランドは、まぎれもなく新世代の映画スターとなった感がある。2022年2月18日~20日の北米興行収入ランキングの第1位は、人気アドベンチャーゲームを実写映画化した『アンチャーテッド』。2021年10月の『DUNE/デューン 砂の惑星』の初動成績を上回り、3日間で4415万ドルを記録した。

 ソニー・ピクチャーズが『アンチャーテッド』の日米同時公開を2月18日と発表したのは、わずか1カ月前の1月17日のこと。同じくソニー配給の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が北米で大ヒット、また日本でも公開から間もないタイミングの告知となった。トム・ホランドの主演映画を、ほぼスパンを空けずに公開するという同社の戦略は功を奏したといえる。

アンチャーテッド
『アンチャーテッド』

 ゲーム『アンチャーテッド』は世界的な支持を受けるシリーズで、映画化企画は以前からファンの注目を集めていた。もちろん今回の初動成績は、トム・ホランドやマーク・ウォールバーグのファンや、『スパイダーマン』を経由して興味を持った観客をつかんだことの表れでもあるだろう。さらにソニーは、前週のスーパーボウルにあわせて予告編を公開する、企業とのタイアップ広告を投入するなど、テレビ・インターネット・SNSを駆使したプロモーションを展開。PlayStationブランドを存分に活かしてゲームファンにも訴求した。

 また2月21日は、アメリカでは祝日にあたるワシントン誕生日。本稿では通常金曜日から日曜日までの興行成績をお伝えしているが、2月21日の月曜日まで含んだ『アンチャーテッド』の興収予測値は、北米興収が5100万ドル、海外興収が8800万ドル。すなわち全世界興行収入は公開4日間で1億3900万ドルに達する見込みとあって、シリーズ化も現実的になってきた。

『アンチャーテッド』

 本稿ではちょうど先週、キャラクター映画人気の高まりに対し、いわゆる“映画スター”の興行的な求心力が落ちている傾向に言及したばかり(参照:『ナイル殺人事件』北米興収1位も苦戦状態 “オールスターキャスト映画”への関心減?)。しかしトム・ホランドは、『スパイダーマン』『アンチャーテッド』というキャラクター/ブランド力の高い作品をヒットに導くことで本人の興行的ポテンシャルを高めてもいるだろう。もっとも、ホランドが近年主演した作品は、配信リリースとなった『チェリー』『悪魔はいつもそこに』と、コロナ禍の劇場公開+事前の評判の悪さで苦汁をなめた『カオス・ウォーキング』の3本。“観客を映画館に呼べる新世代スター俳優”としての真価は今後の判断が待たれる。

 なお『アンチャーテッド』の公開に後押しされてか、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は前週比+1.7%とわずかに持ち直し、765万ドルで第3位にランクイン。同作は2月14日までに『アバター』(2009年)を抜き、米国歴代興収ランキングの第3位となっている。歴代興収のトップ3をマーベル映画が占める状況は、現在の業界の潮流をそのまま反映したもの。コロナ禍で業界の地図が様変わりした今、マーベルをはじめとする人気シリーズを除いた映画が歴代興収の上位に食い込むことがあるかどうかも疑わしい。少なくとも、再び映画業界に大きな変化が生じるまではこの傾向は変わらないだろう。

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