『カムカム』安達祐実、“棒読みで”を完璧にこなす演技力 ひなた×五十嵐の“意気投合”も

安達祐実、“棒読みで”を完璧にこなす演技力

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第16週の締めとなる第77話。あの『黍之丞』シリーズにレギュラー出演していた美咲すみれ(安達祐実)の演技が間近で見られる。サインをお願いするほどに彼女の大ファンであるひなた(川栄李奈)の胸は高鳴っていた。

 「私を誰だと思っているの美咲すみれよ?」ーー矢沢永吉のようなカリスマ性に満ちたセリフの数々。裏の顔を見てしまったひなたは少々ショックを受けてはいたが、それでも演技へのハードルはぐんぐん上がっていたはずだ。

 『黍之丞』シリーズで監督を務めていた轟強(土平ドンペイ)が手がける『破天荒将軍』。そこに珠姫の代役として出演できることになったすみれだったが、これが酷い。第一声から一貫して抑揚もなく、感情もこもっていない棒読み。一気に凍りつく第1スタジオ。轟監督が天を仰ぎ「相変わらずやな~美咲すみれ」と本音をこぼす。『黍之丞』シリーズでは編集でどうにかカバーしていたのだろうか。筆者は字幕設定でオンエアを観ていたのだが、すみれがセリフを発する度に(棒読みで)と入るのがシュールで余計におかしくなってしまった。演じる安達祐実としてみれば不本意な役柄かもしれないが、大根役者を演じるという珍妙かつ難儀なキャラクター。どこか『おちょやん』(NHK総合)での千代(杉咲花)の初舞台をも彷彿とさせる。

 さらに、すみれから繰り出される監督への数々のリクエスト。勝手にセリフを増やしたり、設定を変えてみたり。『黍之丞』シリーズでまだ助監督だった轟はすみれの思うがまま、どなりつけることもできない。そんな“美咲すみれ劇場”と化した重苦しいスタジオの空気を、ひなたの一言が一変させる。久しぶりに時代劇へと帰ってきたすみれの演技に監督含めスタッフ陣は落胆しているが、ひなたの目には一生懸命と映っていた。ひなたはすみれの「ええ作品にしよう」という思いに応えるべく、間違った抹茶の作法に口出ししてしまうのだった。一子(市川実日子)からの「お茶わんの縁で茶杓を軽く打ってお茶を払う」という教えがこんな形で生きてくるなんて。大勢の前で素人に鼻っ柱をへし折られたすみれ。スタッフ陣は絶句。ただでさえピリついていたスタジオがシーンと静まり返る。

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