アニメ『進撃の巨人』総決算! 絶対の正義から相対の正義へ、心の壁は“氷解”するのか

 『進撃の巨人』が“進撃の巨人”というタイトルそのものになった瞬間を見た。

進撃の巨人

 TVアニメ『進撃の巨人 The Final Season Part 2』の第80話「二千年前の君から」で、壁が崩れて巨人たちが現れ、世界に向けて進撃を始めた。続く第81話「氷解」では、エレンの恐るべき野望が明らかとなって全人類を震撼させた。壁の中に追い詰められた人類の反抗から大きく様相を変えた物語はこれからどこへ向かうのか?

 ウォール・マリアの扉が超大型巨人に壊されたことで始まった『進撃の巨人』の物語。残り少なくなった人類が、生存をかけて侵略者の巨人に決死の覚悟で挑む、ヒーローものの1本として受け止めた人が大半だっただろう。

 諫山創による原作漫画は、笑いながら人をむさぼり食う無垢の巨人たちの姿が恐怖を感じさせた。母親を喰われたエレンに自分をなぞらえ、巨人を駆逐してやると憤った人も多そうだ。その漫画連載が2009年に始まってから、3年半ほど遅れてTVアニメ『進撃の巨人』がスタートした頃もまだ、巨人は最後に残った人類を滅ぼそうとしている敵で、調査兵団はそんな巨人に果敢に挑む勇者たちという認識だった。

 Production I.Gから分離・独立する形で設立されたばかりのWIT STUDIOが制作を手がけ、『ギルティクラウン』の荒木哲郎が監督したTVアニメは、壁の上からヌッと現れる超大型巨人の不気味さや、暴れ回る無垢の巨人たちのおぞましさが際立って見え、追い詰められているという気分をかき立てた。

 だからこそ、恐るべき巨人を相手に立体起動装置で飛び回り、剣を振るって巨人を倒す調査兵団のカッコ良さに憧れた。団員たちを追いかけるようにカメラを動かし、戦場のただ中にいるような感覚にさせる作画に引き込まれた。澤野弘之による音楽の荘厳さ、Revoによる主題歌「紅蓮の弓矢」の勇ましさが重なって、見る人をエレンやミカサやリヴァイといった調査兵団の団員に変えた。エルディア人のために心臓を捧げたいとさえ思わせた。

 そうした高揚感が崩れ去る時が来る。超大型巨人や鎧の巨人の正体が判明し、エルディア人を守るものだと思われたパラディ島の壁が実は、世界に仇をなしたエルディア人を封じ込めるものだったと知らされた時、正義の戦いという認識の壁が壊れて立場が逆転した。パラディ島の外にも世界が存在して、大勢の人類が暮らしていて、そしてエルディア人を激しく憎んでいるという状況を浴びせられ、巨人という異形を相手にした絶対の正義が、他の人類を相手にした相対の正義でしかなくなった。

 だからといって、巨人や外界への憎しみが消えないのは、現実の世界で争いがなくならないことからも分かる話。巨人を放ってエルディア人を追い詰めたマーレ人たちへの憎しみを滾らせながら、戦い続けるエレンたちの物語が、WIT STUDIOからMAPPAへと制作会社を移したTVアニメ『進撃の巨人 The Final Season』で描かれてきた。

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