『カムカムエヴリバディ』るいと錠一郎に訪れた光 2人を繋ぎ止めた“サニーサイド”

『カムカム』るいと錠一郎に訪れた光

 錠一郎(オダギリジョー)を支えると決めたるい(深津絵里)は、錠一郎のもとへ足しげく通う。しかし、錠一郎はるいの好意を受け入れることができない。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第59話では、長いトンネルの向こうに一筋の光が差した。

 トランペットを吹くことだけができないという奇病。ミュージシャン仲間が手を尽くすが治療法は見つからず、錠一郎は鬱々とした毎日を過ごしていた。るいは努めて明るく振る舞うものの、錠一郎に拒絶されてしまう。「一緒に泣きたい。苦しみたい」と思いを伝えるるいに、錠一郎は「君に僕の苦しみなんかわかるわけない」と突き放す。嘆願するかのように「僕はもう半年苦しんだ。お願いや。もう解放してくれ」と訴えた。

 あらゆる治療法を試し、時が経って快方に向かうことも期待した。だが、時間は錠一郎に味方してくれなかった。そのことはるいを拒む理由にならないはずだが、錠一郎の中には、幸せになることへの怖れがある。自身を日の当たる道に導いたトランペットを奪われて、文字通り、暗闇の底に突き落とされる心境だった。絶望のさなかでできることは、せめて今の苦しみを忘れ、薄れさせるくらいだ。自分といれば、るいは余計な苦労を背負うことになる。似たような境遇の2人なので、互いを思いやる気持ちは強い。それがかえって2人を遠ざける結果になった。

 錠一郎がるいに「なんでわからんの? もう来てほしないんや」と発する場面。るいが和子(濱田マリ)に向かって「ちょっと怖かったんです。家庭を持ついうことが。母に捨てられて、父の顔も見たことがなくて、そんな私が、家族を作ることなんてホンマにできるんやろうか」と打ち明ける際の背中越しのショット。話者の表情を隠すことで、所在ない手の動きや背中越しのアングルを通して、感情がダイレクトに伝わってきた。

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