『スパイダーマン』に刻まれた珠玉の名台詞 ピーター・パーカーと親愛なる隣人に寄せて

『スパイダーマン』で刻まれた珠玉の名台詞

 ピーターとピーター2(トビー・マグワイア)が、ピーター3(アンドリュー・ガーフィールド)の前で、この言葉を言い合うのも忘れ難い名シーンだった。

僕は、グエンを失った。僕のMJだ。救えなかった。自分を一生許せないけど……でも、努力はしようとした。なんとかして親愛なる隣人のスパイダーマンでいようって。それが彼女の望みだと思うから
by ピーター3(アンドリュー・ガーフィールド)

 メイおばさんを失って落ち込むピーターの前に、恋人のMJ(ゼンデイヤ)、親友のネッド(ジェイコブ・バタロン)、そしてマルチバースからやってきた2人のピーター・パーカーがやってきた。自棄になっていたピーターに、ピーター3は辛い過去を打ち明ける。

 その後、恋人をつくる気にならなかったというピーター3は、完全には立ち直っていないのかもしれない。ヴィランたちとの戦いの中で、落下したミシェルを救出したピーター3は「大丈夫か?」と声をかけながら涙ぐみ、逆に「大丈夫?」と心配される。どうしたって胸が熱くなる場面だ。

ベンおじさんが亡くなった日、僕は犯人と思われる男を追った。死んでほしかった。その望みはかなったけど、心は晴れなかった。暗闇から抜け出すのに、とても長い時間がかかった。
by ピーター2(トビー・マグワイア)

 ピーター2も過去を打ち明ける。彼はベンおじさんを殺した車泥棒を追い詰めて死に至らしめるが、それで気が晴れたわけではなかった。復讐が最良の選択ではないということは、グリーンゴブリンとの戦いでも、身をもってピーターに伝えていた。

あなたたちを助けたかった。殺せたかもしれない。これを使えば、そうできた。チャンスをあげてって、おばさんに教わったから、ここに来たんだ。
by ピーター・パーカー

 ピーターはデイリー・ビューグルを通して、ヴィランたちに自由の女神像のあるリバティ島へ来るよう呼びかける。メイおばさんの強い影響が感じられる言葉だ。

 ピーターはメイおばさんの教えを守ろうとして大きな犠牲を払った。一度は教えを捨てて、ヴィランたちを送り返して殺そうとした。彼の信念は大きく揺らいでいたのだ。しかし、MJとネッドの支え、ピーター2とピーター3との出会いによって、彼は信念を取り戻そうとしていた。ピーターはニュースを見ている世界じゅうの人たちに語りかける。「祈ってて。親愛なる隣人の幸運を」。

待って待って。君たち、大好きだ!
by ピーター3

 3人のスパイダーマンがヴィランたちと戦うが、ピーター2とピーター3はチームプレーを経験したことがなかったため、劣勢を強いられる。形勢を立て直す際、ピーター3からあふれ出るように投げかけたこの言葉は、アンドリュー・ガーフィールドのアドリブだったという。※1

言わないで。それは次に会ったときに聞くから。
by MJ(ゼンデイヤ)

 ピーターがMJとネッドに、自分についての記憶がなくなると告げた場面での言葉。記憶を失ったMJは、会いに行ったピーターに「愛してる」と言うことはなかったが、首からはピーターからもらったブラック・ダリアのペンダントがぶら下がっていた。

全ての人に救いの手を。
by メイ・パーカー

 メイおばさんの墓標には、こう記されていた。この言葉は彼女の信念そのものであり、ピーターの博愛的な行動は彼女からの教えにほかならない。ピーターとメイおばさんの物語は、MCU版『スパイダーマン』3部作のコアだったと言っていいだろう。記憶を失ったスターク社のセキュリティ責任者、ハロルド・“ハッピー”・ホーガン(ジョン・ファヴロー)に、ピーターはこう言う。「消えることはないよ。彼女が支えたみんなが、引き継いでいく」。

3、それは魔法の数字さ
そうさ、それは魔法の数字なのさ
by デ・ラ・ソウル「The Magic Number」

 映画のエンディングを飾るのは、デ・ラ・ソウルが1989年にリリースしたヒット曲「The Magic Number」。「3」が魔法の数字だと歌う、非常に示唆的な歌詞だ。ピーターとMJとネッドで「3」、ピーター1とピーター2とピーター3で「3」、『スパイダーマン:ホームカミング』と『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』と『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で「3」。

 この曲の「(3は)1と2がなければ存在しないのさ」という歌詞は、過去がつながって現在に至っていることを示し、「3はポジティブ・サム(互いが利益を得ること)への魂を生み出す」という歌詞は、ピーターたちの絆がより良い未来へとつながっていることを想起させる。

 大切な親族を亡くし、恋も友情も失い、大富豪やスーパーヒーローたちの支えもなくなったピーカーは、ひとりきりで小さな部屋から“親愛なる隣人”スパイダーマンとして、困っている人たちに救いの手をさしのべようと決意した。今はみんながピーターのことを忘れていても、ピーターが彼らとの絆を忘れない限り、孤独なヒーローの魂は癒やされ続けるのだろう。

※参考
1.https://variety.com/2022/film/news/andrew-garfield-spider-man-no-way-home-1235148458/

■公開情報
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
全国公開中
監督:ジョン・ワッツ
脚本:クリス・マッケナ、エリック・ソマーズ
製作:ケヴィン・ファイギ、エイミー・パスカル
出演:トム・ホランド、ゼンデイヤ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョン・ファヴロー、ジェイコブ・バタロン、マリサ・トメイ、アルフレッド・モリーナ、ウィレム・デフォー、ジェイミー・フォックス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
原題:Spider-Man: No Way Home
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