市川実日子、恋のライバル役でも漂う“相方”感 『カムカム』でるいの背中を押す存在に?

市川実日子、恋のライバル役でも漂う相方感

 俳優・市川実日子が物語に登場すると、なぜか自然に心が浮き立つ。凛とした佇まいと挑戦的な眼差し。その全身から放たれる、何にも染まらない自由なオーラが新たな展開を予感させるからかもしれない。

 現在放送中の『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)でも、彼女は深津絵里演じる二代目ヒロイン・るいの運命を変える瞬間に立ち合った。るいが失敗に終わった初デートの帰りに偶然立ち寄ったジャズ喫茶「Night and Day」で、密かに“宇宙人”と名づけていた謎の男(オダギリジョー)がミュージシャンだったことを知る重要な場面。市川が演じるのは、ジョーこと錠一郎を追っかける女子大生の“ベリー”だ。その個性的な名前とともに、錠一郎と親しげに話するいに対して、最初から敵意剥き出しの強気な姿勢が印象付けられた。

 この時点でるいの恋のライバル的な存在になりそうな予感が漂っていたが、同じように上白石萌音演じる初代ヒロイン・安子編の節目で雪衣(岡田結実)が登場した時と視聴者の反応は随分異なる。安子の義弟、つまりるいの叔父にあたる勇(村上虹郎)に想いを寄せていた雪衣に対しては「何か一波乱巻き起こすのでは?」と不安視する声もあったが、ベリーは多くの視聴者から歓迎をもって受け入れられた。それは市川がこれまでの出演作で主人公の良き“相方”を演じてきたからだろう。

 2018年に放送されたドラマ『アンナチュラル』(TBS系)では、死因究明に特化した研究所で働く臨床検査技師の東海林を演じた市川。東海林は法医解剖医のミコト(石原さとみ)を膨大な専門知識で支える仕事のパートナーであり、くだらないことで笑い合える数少ない友人でもあった。2人ともサバサバした性格だが、些細なぶつかり合いで「別にうちら友達じゃないし」と言って不貞腐れる子供っぽい一面も。でも喧嘩を長引かせることなく、すぐに仲直りして飲みに行くさっぱりとした関係性に憧れた人も多いだろう。

 その翌年も同じくTBS系のドラマ『凪のお暇』にて、市川は主人公の凪(黒木華)がハローワークで知り合って仲良くなった龍子役で出演。初対面の凪に“前向きな気持ちになれる石”のブレスレットを売りつけ不穏な空気を漂わせながらも、不器用な者同士がスローテンポで友情を育んでいく姿が微笑ましかった。

 そして忘れてはならないのが、昨年大ヒットしたドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)の綿来かごめ役。祖母の遺産を勝手に児童福祉施設へ寄付したり、かわいそうな近所の赤ちゃんを誘拐して指名手配されたりと、かごめは市川が演じてきた中でもズバ抜けて癖の強いキャラクターだ。第6話での衝撃的な死とともに深く視聴者の記憶に刻まれた彼女だが、それ以上に主人公・とわ子(松たか子)との名前がつけ難い関係性が印象的だった。余計なことは口に出さずとも、一緒にいればなぜか心地よい。そんな熱くも冷めてもいない、ぬるま湯のような大人の友情を描く上で、市川実日子という存在は欠かせないのだ。

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