『劇場版 呪術廻戦 0』で描かれた、五条悟が“最強”である所以 夏油との別れと夢想

『呪術廻戦」五条悟はなぜ“最強”なのか

五条悟が“最強”と謳われる所以

 なお、劇場版での五条の大きな見どころの一つは、間違いなく百鬼夜行での戦闘シーンである。ここは原作『0巻』で実はそこまで描かれていなかったのだが、スタジオMAPPAの手腕も相まって力強いシーンになっていた。『0巻』のあとがきで芥見は「百鬼夜行のMVPはミゲル」とコメントしており、本作を観るとあの五条の繰り出す百裂拳のようなパンチをもろに受けても原型をとどめていたミゲルがますます凄いやつだという実感がわく。突如戦闘に乱入してきた巨大な呪霊に対しても、一瞥もせずに「赫」で瞬殺する強さ。大画面で見るのが醍醐味のシーンが数多く展開されていくが、五条が“最強”と謳われるのは、そういった肉体的な強さだけを指しているわけではないのが、夏油との最期のシーンでわかる。

 腕を落とし、なんとか乙骨との戦いから生き延びた夏油。そんな彼を処刑できるのは、かつての親友の五条しかいなかった。「殺さなければいけない」「殺される」。示し合わせるまでもなく承知の事実として、お互いがそれを口に出さないまま少し雑談する。そして最期、五条は夏油にある言葉をかけた。これは原作でも劇場版でもなんと言ったか明かされていないものの、声優を務めた中村悠一が「台本にはそのセリフが書いてあって、収録もした」と、ラジオ出演時に話していた。その言葉に対して呆気に取られ、「最期くらい呪いの言葉を吐けよ」と夏油は笑う。呪いの言葉とは、反対の言葉。それを伝え、自らの手で親友を殺した直後も、生徒のもとに駆けつけ乙骨の解呪を祝う。その後、夏油が持っていた乙骨の学生証を返した時も、「僕の親友だよ、たった1人のね」と話す表情も、ずっとにこやかなのだ。生徒の前で、私情を見せない。これはアニメ版ひょうひょうとした態度にも見られる姿勢だ。その精神力、それを以てして五条悟は“最強”なのではないだろうか。

■公開情報
『劇場版 呪術廻戦 0』
全国公開中
声の出演:緒方恵美、花澤香菜、小松未可子、内山昂輝、関智一、中村悠一、櫻井孝宏
原作:『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』芥見下々(集英社 ジャンプ コミックス刊)
制作:MAPPA
配給:東宝
(c)2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 (c)芥見下々/集英社
公式サイト:jujutsukaisen-movie.jp
公式Twitter:@animejujutsu

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