松本まりかが振り返る2021年の大躍進 「この1年は欲しかったものを手に入れられた」
『ミッドナイトスワン』の内田英治が監督を務めた、東映と東映ビデオによる新たな映画フォーマットオリジナル配信作品『雨に叫べば』。内田監督自身のかつての姿が投影された主人公の映画監督・林花子を演じるのは、連続ドラマ単独初主演となった『WOWOWオリジナルドラマ 向こうの果て』で内田監督とタッグを組んだことも記憶に新しい松本まりかだ。今年は4本のドラマ、映画で主演を務めるなど、20年以上のキャリアにおいても最高潮と言える活躍ぶりを見せている松本に、撮影現場における変化や映画への思いについて話を聞いた。【インタビューの最後には、コメント映像&サイン入りチェキプレゼント企画あり】
「監督の理想の人になっていく作業は、ものすごく楽しい」
ーー内田英治監督とは今年5月から放送された『WOWOWオリジナルドラマ 向こうの果て』でもご一緒されていましたが、この『雨に叫べば』にはどういう経緯で出演することになったんですか?
松本まりか(以下、松本):ちょうど『向こうの果て』を撮っているときにこの話をいただいたんです。『向こうの果て』の撮影が終わってからすぐに『雨に叫べば』の撮影に入りました。
ーー2作続けて同じ監督の作品に出るのは割と珍しいことかもしれませんね。
松本:そうですね。『向こうの果て』は連続ドラマの主演自体が初めてだったんですけど、内田さんと2作続けて、しかも主演作品でご一緒できるということに、嬉しい縁を感じました。
ーー『雨に叫べば』で松本さんが演じられた新人監督・林花子には、かつての内田さんのイメージが反映されているそうですね。
松本:性別が違うのでだいぶデフォルメされているとは思いますけど、内田さんのかつての姿が花子に投影されています。80年代というこの時代に“女性監督”というのも珍しいですが、内田さんご自身もブラジルで生まれて日本に馴染めなくて……という経験をされているので、そういう側面は花子が置かれた状況そのままなのかなと。“かつての内田さん”とも言える役をやることができるのも、すごく嬉しかったですね。
ーー役作りについて、内田監督から何かオーダーはあったんですか?
松本:「ウジウジしてほしい」と言われました(笑)。実際にやってみて、「ちょっと弱すぎないですか?」と言ったんですけど、「それでいい」と。
ーーそれがかつての内田さんの姿だったわけですね。
松本:そうみたいです。他人には理解できないテイクを重ねるとか(笑)。でも、そういうのが、やっていてめちゃくちゃ楽しかったです。「湯気が出ないんで……もう一回お願いします」とか言うんですけど、それよりコテコテな芝居になっているのを演出した方がいいのに(笑)。そういう、すごく地味な“おもしろポイント”がたくさんあります。一方で、男尊女卑的な考え方やパワハラがまだ蔓延っている80年代後半の映画制作現場を舞台にしているので、今の時代と照らし合わせたらどうなのかといった大事なことも描かれています。
――80年代というと、松本さんはまだこのお仕事はされていませんよね。
松本:私は2000年にこの仕事を始めたので80年代の制作現場は経験していないんですけど、この映画では割といろんなことが面白い形でデフォルメされているんですよね。ただ、ここまでじゃないにしても、この映画で描かれていることは、ほとんど“あるある”だと思います。そういうことをちゃんとセリフにしてくれていたり、態度に出してくれている。なので、時代で言うと一昔前の話だけれど、そうでもないというか。私たちのように撮影現場のことをよく知っている立場から観ても面白いですし、撮影現場のことを知らない人が観ても面白く感じていただけるのではないかなと思います。
ーー20年以上、ドラマや映画の撮影現場を経験されてきた中で、何か変化を感じることはありますか?
松本:全体的に皆さん優しくなったと思います。“強制しない”というか。監督にしても、人によっては何も言わなかったりしますし、怒号が少なくなったように思います。あと、やっぱり女性が増えましたね。女性スタッフがパワフルになったなと感じます。
ーー松本さんご自身は、監督に演出してもらうのと、自ら考えて芝居を作るの、どちらの方が好みですか?
松本:私はどちらかというと、監督に演出してもらいたいかもしれません。監督はもちろん、スタッフさんや共演者の方の意見を取り入れながら、みんなで作っていきたいタイプなんです。自分の中にはない考えが発見になったりもするんですよね。だから、監督とのセッションの中で「もうちょっとこうしてほしい」というオーダーを聞いて、役をその方向に近づける作業が、すごく楽しくて。そうすると、“作っているな”という感じもしますし、自分が想像し得なかった役になる。それが、私が俳優をやっていて、すごく面白いと感じるところです。自分自身で演じながら、監督の理想の人になっていく作業は、ものすごく楽しいですね。