松本まりかにようやく時代が追いついた? “怪演”の裏にある確かな演技力
今や俳優界きっての怪演女優として大ブレイク中の女優・松本まりか。今期は『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日)、『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)などに出演し、最近ではバラエティ番組や自身のインスタライブでも話題を呼んでいる。
甘い声と妖艶な仕草、そしてスイッチが入ったときの感情激しい演技に、毎回ドラマに波乱を巻き起こす女優・松本まりか。今や彼女が登場するだけで「何かあるのでは?」と期待をさせる女優のひとりだが、そんな小悪魔なイメージが定着したのは、2018年のドラマ『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)。夫がいながら不倫相手を奪い取ろうとする魔性の女を演じ、その“あざとかわいい”怪演で話題に。以降は、『健康で文化的な最低限度の生活』(カンテレ・フジテレビ系)でのシングルマザーや、AbemaTVのオリジナル連続ドラマ『奪い愛、夏』(テレビ朝日系)では、水野美紀、小池徹平とドロドロの三角関係を繰り広げるなど、エキセントリックなキャラクターの熱演で人気を博している。
ただ、30代以上のドラマ好きにとっては、こうした形で松本がブレイクしている姿に、感慨深さを覚える人も少なくないだろう。松本は、2000年にNHKのドラマ『六番目の小夜子』で女優デビュー。ティーン向け学園ホラーである同作には、当時10代の女優の中で人気だった鈴木杏や栗山千明がメインキャストを務め、松本は学級委員長の花宮雅子役で出演。普段は可愛らしい人なのに、サヨコ伝説にまつわる話を振られたときは豹変した顔となり、相手を詰問する時の圧力や、ヒステリックな叫びなど、当時からテンションの高い演技が実に上手い天才女優だったと思う。同年にヒロインを演じたドラマ『秘密倶楽部o-daiba.com』(フジテレビ)では、栗山千明、須藤温子、ベッキー、宮崎あおいと「リアルシスターズ」を結成し、メディアミックスを展開。“遅咲き女優”と紹介されることが多いが、デビュー時からにすでにブレイクと言える活躍ぶりを見せていた。
それから18年の時を経て、『ホリデイラブ』で話題を呼んだ理由を考えると、昼ドラ風のドロドロとした愛憎劇がなくなって久しく、またそうした作品において必要不可欠な、例えば『牡丹と薔薇』(フジテレビ系)の小沢真珠のような狂気的なキャラクターを演じられたのが、松本だったということではないだろうか。小沢もそうだが、10代からヒロイン的存在だった役者が、歳を重ね吹っ切れた大胆な演技をする意外性の面白さ。時代のニーズにハマったとも言えるが、昔から知る者としては、むしろ松本の魅力にようやく時代が追いついたと考える。