村上虹郎、映画ファンの心を鷲掴みに カリスマ性と経験値を武器にした2021年の飛躍
しかし一方で、村上のカリスマ性(独特な存在感とも言えるかも知れない)に頼り過ぎな印象を受ける作品もあった。『るろうに剣心 最終章 The Beginning』と『燃えよ剣』のことである。いずれも素晴らしい映画作品だと感じたのだが、村上のキャスティングに関しては疑問を抱かずにはいられなかった。というのも、前者で村上が演じているのは沖田総司であり、後者で演じているのは岡田以蔵。ともに実在した人物で、歴史に名を残す剣客(人斬り)である。村上はどちらも好演しているが、立ち位置が惜しいのだ(出番が短い……ということに文句をつけたいわけではない)。
『TheBeginning』の主人公・緋村抜刀斎/のちの緋村剣心(佐藤健)は幕末最強の人斬りで、『燃えよ剣』の主人公・土方歳三(岡田准一)は負け知らずの喧嘩師。そんな彼らに、沖田総司も岡田以蔵もそれぞれ敗北を喫するのだが、彼ら(=村上)の登場は、抜刀斎や土方がいかに強いかを観客に示すためだけに用意されたもののように思えてならなかったのだ。たしかに村上のカリスマ性は、沖田総司や岡田以蔵のような異才を演じるのに適している。だが、この歴史上の人物たちがいかなる強者なのかを観客が周知していなければ、この目論見は失敗なのではないかと思った。佐藤健と岡田准一は、現在の日本において数少ない“アクション俳優” という肩書きをも持つ存在。この2作において村上は、噛ませ犬的ポジションとなっているように感じてしまったのだ。
もう少し村上のカリスマ性に言及するならば、『プリテンダーズ』での彼は適役であり、最良のキャスティングだった。出番としてはワンシーンのみ。しかし彼の演じた“世界”という強烈な個性を持つキャラクターは、村上のような俳優が演じなければならなかったと思う。短い時間で大きなインパクトを観客に与えなければならぬ役どころで、こういった場合こそ技術も重要なのだろうが、やはり“ただそこにいる”だけで何かを訴えることができる力が重要。そのうえで、作品世界の範疇に収まるよう自制する技術が必要になるのだと思う。村上は作品に対し、最短時間で最大効力を発揮していた。さて、2022年は何を生み出すか。
■リリース情報
『孤狼の血 LEVEL2』
Blu-ray:5,280円(税込)
【映像特典】
特報、予告、メイキング、オフィシャルインタビュー、孤狼祭-コロフェス-完成披露プレミア、公開記念舞台挨拶、肖像画サプライズプレゼント、Vスポット、キャラ動画、WEB動画、ポスターギャラリー
DVD:4180円(税込)
【映像特典】
特報、予告
出演:松坂桃李、鈴木亮平、村上虹郎、西野七瀬、音尾琢真、早乙女太一、渋川清彦、毎熊克哉、筧美和子、青柳翔、斎藤工、中村梅雀、滝藤賢一、矢島健一、三宅弘城、宮崎美子、寺島進、宇梶剛士、かたせ梨乃、中村獅童、小栗基裕、吉田鋼太郎
監督:白石和彌
脚本:池上純哉
原作:柚月裕子『孤狼の血』シリーズ(角川文庫/KADOKAWA)
製作:『孤狼の血 LEVEL2』製作委員会
販売:東映
発売:東映ビデオ
(c)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
※15歳以上がご覧になれます