松下洸平が『最愛』で全うした大輝との時間 第1話の独白から涙で物語ったラストまで

松下洸平が涙で物語った大輝の「最愛」

 電話口で、大輝が加瀬に向かって振り絞るように伝える「踏み越えてまったら戻ってこられんやろ!」という苦しげな声。ここに入れ替わるようにかかってきた梨央からの電話に大輝は「梨央、幸せか?」と問いかけた。新薬が承認されたことで梨央の夢が叶ったこの日、梨央は「こんな幸せな日はないわ」と喜びに声を弾ませる。その声に大輝はつむった目から涙をこぼし、大きく頭を垂れるのだった。これこそが、大輝が「最愛」のためにひとつの大きな“真実”を飲み込む決意をした瞬間だったのではないだろうか。ラストでの「俺は……お前が笑っとるの見とれば、それでええ。簡単やわ、俺は」という台詞に繋がる、大きなきっかけになったシーンのように感じた。この苦しみと抱えきれないほどの愛を、松下はこぼれゆく涙で物語る。

 愛は理屈ではなく感情だ。どんなに頭で考えていることがあったとしても、愛を前にしたらそれは一瞬で消え去ってしまう。大輝は電話口の幸せな声を聴いた瞬間に、梨央の笑顔を一番大切にしたいと感じたのだろう。そして、その笑顔さえあれば、自分はどんな苦しみをも厭わないと思った。大輝はそんな自分を顧みて、“簡単な男”だと言いたかったのではないだろうか。

 私たちは、ふたりの背中を見送りながらこの物語にも別れを告げる。大輝と梨央を見守った3カ月からゆっくりと解き放たれ、己にとっての「最愛」と向き合い直すのかもしれない。

■配信情報
金曜ドラマ『最愛』
TVer、Paraviにて配信中
出演:吉高由里子、松下洸平、田中みな実、佐久間由衣、高橋文哉、奥野瑛太、岡山天音、薬師丸ひろ子(特別出演)、光石研、酒向芳、津田健次郎、及川光博、井浦新
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子
編成:中西真央、東仲恵吾
主題歌:宇多田ヒカル「君に夢中」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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