『最愛』のラストは企画段階から決まっていた? 新井順子Pが語るサスペンスドラマの苦難

新井順子Pが語る、サスペンスドラマの苦難

 先の読めない展開で話題を集めている金曜ドラマ『最愛』(TBS系)が、12月17日に最終回を迎える。主人公の梨央(吉高由里子)を取り巻く15年前から現在へとつながる連続殺人事件。その真相を追う梨央の初恋の人であり刑事の大輝(松下洸平)との純愛。親子、姉弟、血のつながらない家族……それぞれの“最愛”が絡み合った先に行き着く結末とは!?

 すぐにでも観たい楽しみと、真実を知ってしまう怖さと、これで見納めになってしまう寂しさと。複雑な思いを抱えている視聴者も少なくないのではないか。そんな最終回直前のタイミングで、新井順子プロデューサーがインタビューに登場。視聴者への“ラストP’sヒント”とも言えるクライマックスの見どころ、愛情たっぷりの制作現場の秘話、そしてまだ見ぬ次回作への意欲について語ってくれた。(佐藤結衣)

企画段階から決まっていたラスト

――謎が謎を呼ぶストーリーに、視聴者の中には“考察班”も多数出現して新井さんからの“P’sヒント”にも注目が集まっていました。出す側としての心境はいかがでしたか?

新井順子(以下、新井):ヒントを出すのって本当に難しいんですよね。伝えたいことはあっても、まだ伝えちゃいけないこともあるし。それにあまりにバレバレだと、それはそれで面白くなくなっちゃうし……。でも、視聴者のみなさんがSNSやYouTube動画などで盛り上がっているのをちょこちょこチェックさせてもらっていました。基本的には好きなように楽しんでいただけたらと思っているんですが、こちらが意図していない形で伝わってしまっている誤解のようなものは解いていかないとなって。

――例えば、どのような形で?

新井:「達雄さん(光石研)が自殺なんじゃ?」「いや殺されたんだ!」という見方をされている声があったので、“これはちゃんと病死だったんだと伝えなくちゃ”と思いまして。ひっそり本編のダイジェストにセリフを追加して“そこは深読みしても何もありませんよ”って気づいてもらえるようにしました。どんな考察も否定しないでいきたかったんですが、1つだけ明確に「それはない!」って言わせてもらった意見があって。「梨央と加瀬さん(井浦新)が実は親子だ」っていう声には「加瀬さんのこと何歳だと思ってんの!」ってツッコませてもらいました(笑)。

――(笑)。その井浦さんがインタビュー時に、加瀬を演じる上で「“加瀬らしさ”の枠にとらわれないようにチャレンジした部分もあった」とおっしゃっていましたが、新井さんから見て印象的なシーンはありましたか?

新井:現場で見ていて「あ、加瀬さんそういう言い方するんだ」みたいなことは多々ありましたね。特に印象的だったのは「1人で行くなって言ったよね?」「勝手になんで会うかなぁ」みたいな感じで梨央を叱ったときの距離感の絶妙さ。かと思えば、第6話では弁護士としてビシッと決めていましたし。加瀬さんが“ただいい人”みたいにならないように、いろいろな表情があることを見せてくれたなって思いました。

――『最愛』をはじめ新井さんの手掛けてこられた作品は、登場人物のキャラクターがステレオタイプではなく、その作り込みが物語を生々しくしているのかなと感じています。そしてキャストのみなさんも、そこに挑む楽しさを見出しているように思えるのですが。

新井:ドラマを作る上で、人間模様を描かずして何を描くんだという思いはありますね。キャラクター1人ひとりに積み上げてきた人生があるわけじゃないですか。その背景を描くことで、人間模様がより見えてくるというのは、自然とやろうとしているところだと思います。ドラマを観ていて、「え、なんでこの人こんなこと言うの?」とか「第1話で言ってたことと第5話で言ってたこと違くない?」ってなると、気持ちが悪いじゃないですか。その人がこのセリフを言う必然的な理由が見えてこないと納得できない。私自身が視聴者目線でそう思うから、作るときにもその感覚は譲れなくて。『最愛』に関しては15年繋がっている物語なので、“15年前のあれが今のこれに繋がっている”みたいに、より細かいところまで紐付けて考えていかなければならなかったところはありますね。

――視聴者のみなさんが気になっているラストについては、企画の段階から決まっていたのでしょうか? それとも撮りながら調整されていったのでしょうか?

新井:「犯人、この人でした」までしか企画書の段階では書いていませんでした。なので、どう終わるかは作りながら悩んだところではあります。「あの人が犯人で、こういう心情だった」みたいなところも決まっていたんですが、それをどう見せていこうかと。

――ちなみにキャストのみなさんはラストの台本を受け取るまで結末を知らないとお聞きしました。

新井:それぞれに反応がありましたね。最初、そのシーンには関係ない人の最終話の台本は真っ白のページにして配ろうかなと思ってたくらい(笑)。

――では、最終回のP’sヒントは……?

新井:「それぞれの最愛はなんだったのか」ということしか言えない(笑)。ヒントになってないですかね? それ以上は何を言ってもネタバレにしかならないので、もう「観てください」としか!

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