【ネタバレあり】『最愛』最終回で響いた「真相は、愛で消える」 犯人が至った愛の形
「真相は、愛で消える」
そうポスターに掲げられていた本作のコピーが、ずしりと重く響く。金曜ドラマ『最愛』(TBS系)がついに完結した。
※以下、ネタバレを含みます。
梨央(吉高由里子)を取り巻く連続殺人事件の犯人は、加瀬(井浦新)だった。だが、たしかに加瀬は罪を犯した人ではあるが、その罪を重ねても守りたかったものを思えば、“犯人”という一言で片付けるにはあまりにも心が苦しい。加瀬がしたことは正しいことではないが、間違っていたのだろうか。その結論を出すのは、簡単なことではない。
梨央を愛するという意味では、事件を追う刑事・大輝(松下洸平)と加瀬は同志だった。その大輝がすべての真相にたどり着いてしまうのも、きっと必然だったのだろう。藤井(岡山天音)による誘導尋問のようなやりとりではっきりとしたはずだ。犯罪に手を染めることもいとわない、そのくらいの強い想いで梨央を守るとしたら、もはや自分以外には加瀬しかいないのだから。
大輝も、そして視聴者も祈るような思いだったに違いない。「加瀬さんではありませんように」と。しかし、その願いもむなしく、橘しおり(田中みな実)の死亡推定時刻がズレたことをきっかけに事件に加瀬が関与していることが次々と繋がっていってしまう。加瀬を追いながら大輝は「なんで一線を踏み越えた? 踏み越えてまったら戻ってこられんやろ」と問いかける。
きっと大輝にはわかっていたのだろう。加瀬はこのまま梨央と優の前から姿を消す。それは、彼が罪を逃れるためではなく、それさえも梨央を守るため。加瀬が捕まることは、すなわち梨央たちに罪悪感を植え付けることになる。せっかく認められた新薬にも、また好ましくない批判がつく。ならば、すべての因縁と共に自分が姿をくらまそう。それが、加瀬の至った愛の形だった。
「法律では守れないものがあるからです」。この言葉を、法律を盾に戦ってきた弁護士の加瀬から出たことに胸が痛む。一方で、どんなに許されない人をも法のもとで裁き、苦しんでいる人を助けたいと願った刑事の大輝が、この言葉を受け止めるやるせなさ。この社会は、あまりにも法律では救われないことが多い。そのことを、他の誰よりも知っていることが辛かった。
だから、加瀬は梨央たちのもとから離れ、大輝も加瀬のことを話さないことを決めたのだ。加瀬にとって梨央たちのそばに二度と戻れないということは、警察に捕まるよりも、ある意味では極刑に処されるよりも辛いことだったに違いない。そして、その事実を知らせないということが大輝のできる梨央の笑顔を守る唯一の方法だから。