『恋です!』獅子王の森生への愛が切なすぎる “自分”を打ち消す鈴木伸之の演技力に脱帽

『恋です!』鈴木伸之演じる獅子王の切ない愛

「森生、幸せになってくれ。それが、俺の夢だ」

 泣きながら森生(杉野遥亮)に語りかける獅子王(鈴木伸之)が切ない。中学生の時に、森生の顔にキズをつけてしまってから、獅子王はずっと苦しんできた。森生から、“普通”に生きる道を奪ってしまったことを。いっそのこと、恨んでくれればラクだったのに、森生は責めてくれない。どうして自分には、傷跡ひとつ残っていないのだろう……。『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(日本テレビ系/以下『恋です!』)第7話では、そんな獅子王の葛藤が繊細に描かれた。

 ユキコ(杉咲花)の父・誠二(岸谷五郎)が言うように、若気の至りなんてものは誰にだってある。無意識のうちに他人を傷つけてしまったり、逆に傷つけられたり。そうするうちに、人の痛みを学んでいくものだ。それに、“されたこと”は覚えていても、“したこと”はすぐに忘れてしまう人が多い。でも、獅子王はちがう。ずっと、“傷つけてしまった”十字架を背負って生きてきた。だからこそ、森生には幸せになってほしいのだ。泣くほどに他人の幸せを願えるとは、どれほど深い愛なのだろう。

 さらに獅子王は、自分が“普通”ではないという悩みも抱えていた。イズミ(奈緒)に明かしていた“想い人”とは、森生のことだったのだ。となると、イズミの失恋が確定してしまう。想いを寄せていた相手の好きな人が、妹の恋人……。きっと、複雑な気持ちにもなっただろう。それでもイズミは、「推しだと思って見守っていいですか?」と獅子王に語りかける。「引かないんですか?」「えっ? 獅子王さんを? どうしてですか?」と変わらぬ態度で接してくれるイズミに、微笑む獅子王。2人の関係は恋とはちがう。それでも、獅子王とイズミには、2人ならではの“普通”の価値観が共有されたように見えた。

 獅子王の愛すべきキャラクターが光った第7話。演じている鈴木伸之の演技が、またいい。これまでは、森生のことを“ライバル”として見ていたはずなのに、「幸せになってくれ」と語りかけた時の表情は、“大事な存在”に向ける眼差しに変わっている。純粋で優しい目からは、森生の幸せを切に願っているのが伝わってきた。さらに、“貴様”と呼ぶ時と、“森生”と語りかける時は、声の柔らかさがちがう。獅子王は森生と向き合う時に、さまざまな表情を使い分けなければいけない。因縁のライバル、傷つけてしまった相手。そして、“想い人”として。その変化を、鈴木は見事に演じ分けていた。

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