『恋です!』には古き良きラブコメの“丁寧な関係性”が詰まっている
現在放送中の『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(日本テレビ系)は、原作にない『恋です!』という言葉がタイトルに加えられていることもあり、原作の持つテーマがおざなりにされるのではないかと心配されていたりもした。だが、蓋をあけてみると、原作の要素をうまくドラマに盛り込んだ丁寧な作りで、ドラマファンからも好評であると感じる。
このドラマは、盲学校に通う弱視の主人公のユキコ(杉咲花)と、彼女に恋をした顔にキズのあるヤンキーの森生(杉野遥亮)とのラブコメディでもあり、またユキコやその同級生たちの普段は焦点の当てられていない日常を描くというテーマも持っている。
そのため、毎回、ユキコが使っている白杖や、映画鑑賞のときに使用する音声ガイドなどの道具などについて、「R-1ぐらんぷり」で優勝経験もある芸人の濱田祐太郎による解説などもある。
また、ユキコや彼女の同級生たちが出くわすさまざまな不条理も隠さずに描く。例えば、森生にずっと思いを寄せていたハチ子(生見愛瑠)は、森生がユキコに優しいことに嫉妬して、白杖を持っている彼女に対して「障がい者はズルい。だってこの白杖があれば許されるんだから」と言葉をぶつけるし、ユキコのバイト先の仲間が「ちょっと甘えてない? こんなことできなくて当たり前、できなくて許されると思ってないかな?」と面と向かって彼女に告げるシーンもある。
ユキコの姉のイズミ(奈緒)は、妹を心配するが故に、「ユキコにはできないことが多いんだから」と彼女が前に進もうとすることを阻んでしまうこともある。ユキコの盲学校の同級生の空(田辺桃子)にいたっては、ランニング中にわざと何者かが彼女が走るコースに岩や自転車など、障害物を置くということまで起こる。
毎回、こうした出来事に、そんなに衝突があるものなのかとか、そんな心ない人がいるものなのかと驚きもするが、空の台詞、「たまにいるじゃん、歩いてると白杖蹴とばしてきたり、本当に見えないのか?って難癖つけてくるようなやつ」を聞いて、こちらの認識の甘さに気づかされる。こうしたエピソードは直接、現場を見たことはなくとも、インターネット上で見聞きしたこともあるからだ。
原作にもある要素であるが、こうした部分をドラマでもしっかりと描いていることも、このドラマが信頼されている所以ではないだろうか。特に空のコースに障害物を置いた元彼がどんなに弁明したとしてもそれに流されず、きっちりと警察に連れていくような描写にも信頼感を持った。