吉高由里子×松下洸平、“走る2人”を描き続ける『最愛』 抱きしめた手の行き着く先は?

“走る2人”を描き続ける『最愛』

 離れ離れになった2人は、「人のためになる仕事がしたい」という共通した思いで、片や創薬事業の立ち上げ、片や警察官になるという第一目標を達成していた。これもまた見えないところで共に「並走」していたと言える。また、大輝は、重大な悩みを抱え、何も言えず彼に背中を向けて闇に向かって走っていったあの日の梨央の姿を何度も思い出す。

 そして、捜査一課の刑事と、殺人事件の重要参考人として再会した2人は、まさに追う・追われる関係となる。とはいいつつ、出会ってしまった2人は、そんなに簡単に割り切れるわけではなく、繊細な心の機微は、追い・追われ、ぶつかり合ったその先の出来事として、やむにやまれず抱き合い、触れ合うことを通して描かれる。

 事件直後、落ち込む彼女を励まそうとして抱きしめた大輝の腕の中で、梨央は彼には言えない気がかりなことを考えながら、彼に気づかれないように、身に覚えのない手首の傷を見つめていた。15年後再会した2人は、最初こそ咄嗟に初対面を装うが、迫りくる車から梨央を守ろうと、咄嗟に抱き寄せた大輝に、梨央の食べていたお菓子のクリームがベッタリつくという不意打ちのハプニングが、本来敵対すべき現在の関係性を忘れさせ、かつての2人に戻すのだった(第2話)。それから第4話、信号が赤から青に変わるまでの、ほんのつかの間の出来事。梨央は、少し先を歩く大輝の背中に向かって「本当は全てを打ち明けてしまいたい」と独白し、実際に縋るように抱きつく。そんな梨央に対して、刑事としての立場を忘れることができない大輝の手は、彼女をしっかり抱きしめることができず、逡巡している。

 第6話の梨央と大輝のシークエンスは、これまでの2人が培ってきたもの全ての総決算だった。「もう会わんようにしよう」と15年前と同じように、「最後」を歩道橋の上と下で迎えようとする梨央に対し、「勝手に決めんな」と大輝は追いかけ、1本の道を隔てて2人は並走する。信号が点滅し、梨央が逃げ切ったと思ったところで、大輝が梨央を、今度は迷うことなくしっかりと抱きしめ、互いに力強い抱擁を交わすが、梨央はその腕の中から逃れ、手を振って走り去るのだった。

 次に再び彼らはどう相まみえるのか。「梨央を守る人」加瀬、「梨央が守る人」優、そして大輝。それぞれの愛が交差し、新たな事件関係者として橘しおり(田中みな実)が浮上してきた。梨央と対比して「殺されでもしなきゃ世間に注目されない」と自虐する彼女は、一体どんな人生を送ってきたのか。まだまだ謎は深まるばかりだ。

■放送情報
金曜ドラマ『最愛』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:吉高由里子、松下洸平、田中みな実、佐久間由衣、高橋文哉、奥野瑛太、岡山天音、薬師丸ひろ子(特別出演)、光石研、酒向芳、津田健次郎、及川光博、井浦新
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子
編成:中西真央、東仲恵吾
主題歌:宇多田ヒカル(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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