『二月の勝者』は生徒たちへの思いが強くなる受験ドラマだ 井上真央の“共感力”にも着目

『二月の勝者』日々増していく生徒たちへの愛

 本作では、これまでメインを演じた生徒の「その後」もきちんと描いており、その変化にも注目してほしい。Ωクラス選抜テストに挑戦するもAクラス維持となり、がっくりと肩を落とす鉄道オタクの匠(山城琉飛)、順(羽村仁成)との約束を果たしΩクラスに上がってきた海斗(伊藤駿太)、どこかカドがとれ、朗らかになった花恋(田中絆菜)、順調に勉強に打ち込み、現在Aクラスの佑星(佐野祐徠)。回を追うごとに、生徒一人ひとりへの思い入れも強くなっていく。

 今回印象的だったのは、佐倉(井上真央)が弓道場に立つシーン。凛とした美しい横顔に、映画『僕の初恋をキミに捧ぐ』で演じた繭役を思い出した人も少なくないだろう。同作の公開は2009年10月、約12年前のことだが、まるい大きな瞳と凛々しい眼差しはまるで変わらない。

 『キッズ・ウォー 〜ざけんなよ〜』(TBS系)で一躍注目を浴びた井上。恋愛作品のヒロインはもちろん、映画『八日目の蝉』、『明日の約束』(カンテレ・フジテレビ系)など難しいテーマを扱った重厚感ある作品の主演も務めてきた。主演、助演問わず輝ける俳優であり、老若男女問わず愛される存在だ。

 本作で演じる佐倉は、例えば『獣医ドリトル』(TBS系)で演じたあすか役のような、「不器用なまっすぐさ」を持つ役どころ。ときに、見ているほうがハラハラすることもあほどだ(とはいえ回を追うごとに感じられる佐倉の変化も、本作の見どころである)。

 融通を利かせることこそ生きやすさとされる現代で、ごく普通の感性を曲げられない純粋さと、その背景にある過去。明暗を共存させる表情も井上の上手いところだ。まっすぐだからこそ壁にぶつかり、それでもきちんと成長していく。そうした新人像を年齢関係なく演じられるのも、揺らぎやすいが「ぶれない芯」を表現できるのも、そこに共感を呼ぶのも、井上真央だからこそだろう。

■放送情報
『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:柳楽優弥、井上真央、加藤シゲアキ、池田鉄洋、瀧内公美、今井隆文、加治将樹、住田萌乃、岸部一徳ほか
原作:『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』高瀬志帆(小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』連載中)
脚本:成瀬活雄
音楽:小西康陽
主題歌: DISH//「沈丁花」(ソニー・ミュージックレコーズ)
テーマソング:NEWS 「未来へ」(Johnny’s Entertainment Record)
演出:鈴木勇馬ほか
プロデューサー:次屋尚、大塚英治(ケイファクトリー)
制作協力:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/2gatsu/
公式Twitter:@2gatsu_ntv
公式Instagram:@2gatsu_ntv

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