裏切りと復讐のサスペンス 『あなたに似た人』ヒジュとへウォンの“色”と“執着”の対比

『あなたに似た人』“色”と“執着”の対比

 ある一人の女性が、死体が入っていると思われる袋を引きずり湖に沈めるシーンから始まったNetflix配信中の韓国ドラマ『あなたに似た人』。その女性の名はチョン・ヒジュ(コ・ヒョンジュ)。有名画家として名声を手にし、テリム財団の息子アン・ヒョンソン(チェ・ウォニョン)の夫と2人の子どもに恵まれ、順風満帆な生活を送っていた。しかし、彼女は“欲望”に忠実に生きる女でもあり、ソ・ウジェ(キム・ジェヨン)という男性と深い関係にあった過去を持つ。その過去のせいで人生を奪われてしまった女性が、ク・へウォン(シン・ヒョンビン)。本作はある日突然、ヒジュの前にへウォンが現れたことにより、裏切りや復讐を重ね、それそれが地獄に落ちていくサスペンスヒューマンドラマだ。

 ここで主要キャストについて振り返ってみたい。ヒジュ役を演じるコ・ヒョンジュは、最高視聴率60%を越えた『砂時計』(1955年)の主演を務めたことで有名だ。本作では、身勝手な言動が目につく欲望のまま生きるヒジュを好演している。へウォン役のシン・ヒョンビンは、復讐という地獄に落ちていく役どころ。『賢い医師生活』(2020〜2021年)のチャン・ギョウル役とは全く違うイメージだが、ミステリアスな役は『ミストレス』(2018年)でも見ることができる。モデル出身のルックスが秘密めいたウジェのキャラクターにハマったキム・ジェヨンは、『100日の郎君様』(2018年)でヒロイン役のナム・ジヒョンの兄を演じていたのが記憶に新しい。

 ヒジュは画家兼エッセイスト、へウォンは美術教師、ウジェは彫刻家であり、本作では様々な作品を目にすることができる。そのため、作品を通して心情が表現されていることも多い。結婚後、アン家で居場所がなかったヒジュは、娘の留学をきっかけに通い始めたドイツ語学院で美大生のへウォンと出会う。そこからへウォンとへウォンの先輩ウジェから絵を教えてもらうように。へウォンとウジェは結婚することになるが、ヒジュとウジェもまた男女の関係にあった。そして、ウジェはへウォンの前から忽然と姿を消してしまったのだ。

 ヒジュは留学先のアイルランドで第2子となる息子を出産し、家族に知られないようにウジェと暮らしていたが、最終的にウジェと思い出をすべて捨てて帰国する。その後、事故に遭って記憶喪失になり身元不明で何年もの間アイルランドの病院にいたウジェ。へウォンがウジェを見つけ出し連れ戻したことから、3人の運命が再び交差し始めたわけだ。この過去を踏まえ、ヒジュとへウォンが“色”の対比で演出されているシーンに注目したい。

 ヒジュのカラーは赤。冒頭の血だらけの床を拭くシーン、へウォンがヒジュの家を訪れた日、へウォンがヒジュかけた赤色の液体、ウジェとキスをしてしまった日も赤いコートを着ている。へウォンのカラーは緑。へウォンがいつも着ている緑コートはヒジュから結婚記念にプレゼントされたもので、とてつもない執念の現れである。かつて幸せだった頃に着ていたドレスは黄色、ウジェと人生を奪われた復讐は緑だ。ところが、第10話で復讐を意味していた緑のコートを燃やしてしまったへウォンは、これからどのような感情をどんな色で表現するのだろうか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「海外ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる