『カムカムエヴリバディ』安子は上白石萌音の運命の当たり役に 類まれなるヒロイン性

『カムカム』安子が上白石萌音である理由

 11月1日にスタートしたNHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で、初代ヒロインを務めている上白石萌音。これぞ朝ドラヒロインの王道と言える、ピュアで真っ直ぐな安子の学生時代を演じ、2週目となる今週も、毎朝甘酸っぱい恋の行方にSNS上で話題が持ちきりになるなど、期待通りの活躍を見せている。そこで、現状での朝ドラヒロインとしての上白石萌音の魅力について掘り下げてみたい。

 「NHKのラジオ英語講座」を題材に、“朝ドラ史上初”の3人のヒロインとなる、上白石萌
音、深津絵里、川栄李奈が、京都、岡山、大阪を舞台に、昭和、平成、令和の3世代を紡ぐ『カムカムエヴリバディ』。上白石は初代ヒロイン・橘安子役を務め、2代目ヒロインとなる深津演じる雉真るいの母、 3代目の川栄演じる雉真ひなたの祖母にあたる役を演じる。

 安子は、日本でラジオ放送が始まった大正14年3月22日に、岡山の商店街にある和菓子屋で生まれた御菓子司「たちばな」の看板娘。安子が小学校3年になり、橘家に安子念願のラジオがやって来たことから物語は始まり、上白石は14歳に成長した安子として登場。高等小学校を卒業し、家業の手伝いをするようになった安子が、幼なじみの雉真勇(村上虹郎)の兄である、帰省中の大学生・雉真稔(松村北斗)と出会い、稔が英語を話す姿を見て、ラジオの実用英語講座を勧められ聞くことに。英語への思いと稔への憧れを募らせていった第1週となった。

 第2週は、徐々に戦争の足音が聞こえてくる中、2人が文通で恋心をさらに募らせていくも、安子に婿養子をとって店を継いでほしいと考える父親に縁談の話を持ち込まれる。悩んだ末に大阪の稔の元を別れを告げる覚悟で訪れ、その様子が気になり岡山まで追いかけてきた稔が事実を聞き、安子の家族に交際宣言をするといった流れで、憧れから現実的な問題が立ちはだかり、店の後継問題、借金地獄のフーテンの兄、そして三角関係と、安子が葛藤する週となっている。

 上白石と言えば、『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)や『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)などで見せた愛嬌と親しみやすさ、そして恋愛や仕事に一途にぶつかっていく健気な演技を見せるのが抜群に上手い役者だ。本来ならあざとく見えがちなところも、その天性のキャラクターによって思わず応援したくなってしまう、朝ドラのヒロイン役と親和性の高い女優と言える。

 今作でも14歳と言われても決して違和感がないほど、その素朴さと岡山弁の訛りが見事にハマり、歳上の稔への夢見がちな初恋の感情が画面から目一杯伝わってくる演技を見せている。稔との最初の出会いである店番のシーンでおはぎを勧めるのに、語っていくうちにどんどんテンションが上がり説明に夢中になる様子や、稔とちょっとでも会話ができた後の嬉しい感情が抑えきれない表情、稔が大阪に帰ることを聞いて、乗れない自転車を何度も転びながらも必死に漕いでいく姿など、上白石の十八番とも言える少女漫画に出てきそうなピュアな少女を愛おしく演じ、平和だった時代を色濃く描いた。

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