BLドラマ、舞台は会社から学園へ 『消えた初恋』から考える“初恋”の作用
本作は道枝演じる青木が片思い中の橋下さん(福本莉子)に借りた「イダくん」と書かれた消しゴムを、目黒演じるクラスメイトの“井田”に見られてしまうところから始まる。これがきっかけで井田を好きだと本人に勘違いされてしまう青木だが、もうすでに「消しゴムに好きな人の名前を書く」というおまじないが、現代的な言葉で表現すると“エモい”。そう、超ピュアな男子高生の恋愛を描いた本作は「甘酸っぱい青春を思い出させてくれるドラマ」なのだ。
学校が舞台だからこそ、イベントが満載でラブハプニングも多発する。青木の恋愛対象は最初こそ女子だったが、井田が文化祭準備での失敗をさりげなくフォローしてくれたり、演劇で着た王子様衣装がとてつもなくかっこよかったり、テストの勉強会で優しく苦手な科目を教えてくれたり……相手を好きになるトリガーが散りばめられているから、視聴者も自分の青春時代を振り返って、共感するとともに胸がキュンと高鳴る。
「これは一生懸命で善良な高校生たちのちょっとおバカな恋の物語である」というプロローグが物語るように、ジャニーズの中でも演技力に定評のある道枝と目黒が演じることによってさらに魅力的になった底抜けに優しくて天然な青木と、しっかり者でどこまでもまっすぐな井田の不器用ながらも一歩一歩進んでいく恋を親心のように見守ってしまう。ドラマに没頭していく内に「男子同士の恋愛」ということは忘れてしまうのだが、やはり同級生から容赦ないからかいの対象になってしまうことも。
そんな偏見や差別をさりげなく克服してくれるのが、福本莉子演じる橋下さんだ。彼女もまた同級生の男子に恋する女の子であり、作中には青木と恋バナで盛り上がる場面もある。橋下さんは青木の気になっている相手が男の子だと知っても引いたり、変に特別視することもない。また、青木が自分に恋していると勘違いした井田も話のネタにしたりすることもなく、真剣に彼の思いと向き合い、同時に人としての魅力に惹かれていく。そんな登場人物たちのまっすぐ目の前の青春を謳歌する姿は懐かしくもあり、また凝り固まった価値観を広げてくれるものだ。ぜひ一度、BLというジャンルに抱くイメージを取り払って、青少年が繰り広げるラブストーリーを楽しんでみてほしい。
■放送情報
『消えた初恋』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30〜24:00放送
出演:道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、目黒蓮(Snow Man)、福本莉子、鈴木仁、田辺誠一
原作:『消えた初恋』原作・ひねくれ渡/作画・アルコ
脚本:黒岩勉
監督:草野翔吾、宝来忠昭
主題歌:Snow Man「Secret Touch」(avex trax)/なにわ男子「初心LOVE(うぶらぶ)」(ジェイ・ストーム)
音楽:富貴晴美
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:神田エミイ亜希子(テレビ朝日)、尾花典子(ジェイ・ストーム)、伊藤学(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作: テレビ朝日、ジェイ・ストーム
(c)テレビ朝日