『青天を衝け』イッセー尾形、流石の演技 『スカーレット』フカ先生とも重なった三野村

『青天を衝け』怒涛のように押し寄せた死

 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)第33回「論語と算盤」では、日本がまた新たな時代に向け歩き出す一つの転換点が描かれる。その象徴として第33回ラストに怒涛のように押し寄せるのが、三野村利左衛門(イッセー尾形)、大久保利通(石丸幹二)、西郷隆盛(博多華丸)の死だ。

 大久保が不平士族によって暗殺された「紀尾井坂の変」、その不平士族を率いて明治政府を相手に7カ月以上もの間戦った「西南戦争」の末、政府軍による総攻撃を受け西郷は自刃している。そして、三野村は病で亡くなるわけだが、この第33回のある種中心の立ち位置にいたのが三野村である。

 第25回「篤太夫、帰国する」で初登場となった三野村は、「まことの戦はこれからざんすよ。わしら商人の戦いは」とその特徴的な前歯に語尾の「ざんす」とインパクト大であった。後に、日本初の私立銀行・三井銀行を設立。栄一と対立しながらもふらっと渋沢家に遊びに来て息子・娘たちと戯れてしまうーー三野村はそんな食えない商人だった。

 三野村を見ていて思い出すのは、朝ドラ『スカーレット』(NHK総合)でイッセー尾形が演じていたヒロイン・喜美子(戸田恵梨香)の師匠で絵付け師のフカ先生こと深野。風変わりで、けれど憎めないキャラクターは今回の三野村にも通ずる部分がある。そんな唯一無二と言ってもいいキャラクター像を確立しているのが、イッセー尾形である。

 栄一を演じる吉沢亮との芝居も和み、時にはスリリングな空気を漂わせてきた。栄一が官を捨て、もう一度一人の民となることを決意する一つのきっかけになった「徳川の世と、なにも変わりませんな」は、徳川の時代には卑しいとされていた商人を代表しての言葉。まさに、時代の変化を象徴する存在に三野村はいたのだ。

 金のために生きてきた三野村は最後に栄一にこう問いかける。「あまりにも金中心の世の中になってきたってことですよ。今や誰もが金を崇拝し始めちまっている。こりゃあ、あたしら、開けてはならぬ扉を開けちまったかもしれませんぜ。さぁて、どんな世になりますかねぇ」。懐に『論語』を挟めた栄一は、その言葉に胸をぐるぐるさせていた。

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