『恋です!』で知る、“当たり前”の難しさと人の優しさ 唯一のヒール・ハチ子にも注目

『恋です!』で知る“当たり前”の難しさ

 誰もが、ユキコ(杉咲花)のことを思いやる優しい世界ーー。これまでの『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(日本テレビ系/以下、『恋です!』)は、森生(杉野遥亮)やイズミ(奈緒)など、ユキコのことを理解しようとする人々を中心に描いてきた。ただ、社会に出てお金を稼ぐとなると、雇うことの“メリット”が求められる。

 10月27日放送の第4話では、ユキコが、行きつけのバーガーショップでアルバイトを始めることに。どうやら、レンタルビデオ店で働き始めた森生に感化されたようだ。しかし、バイト先で待ち受けていたのは、これまでのような優しい世界ではない。忙しい厨房で失敗ばかりのユキコに対し、紅林(吉住)や紺野(大友花恋)は如実に嫌悪感を示す。

 ユキコにとっては、前髪を帽子にしまうのも一苦労だ。鏡にグッと寄っても、髪の毛の1本1本は確認しづらい。私たち視聴者はそれを知っているから、「鏡を見て確認して」と言った紅林が“意地悪”に見えてしまう。だが、彼女は知らなかっただけなのだろう。そもそも、弱視とはどのような状態にあることを言うのか。そして、弱視と一括りにしても、人によって見え方が異なるということ。

 アルバイトのマニュアルは、文章で渡すよりも、口頭で言った方がいい。タイマーのスイッチも、どこにあるか印をつけてあげたら分かりやすいのに……。私たちがそう感じるのは、本作を通してユキコの生活を“知る”努力をしてきたから。光と色がぼんやりわかる程度の弱視は、どのような見え方をするのか。日々の生活を送る上で、どんなことに不自由を感じているのか。森生が、絶対に点字ブロックの上を歩かなくなったように、私たちの意識も少しずつ変わってきている。

 最初は、「いるだけでお金もらえるなんて」「障害者雇うとお金もらえるからでしょ?」と言っていた紺野が、ユキコの一生懸命な姿を見て考えを改めたように。相手を“知る”ことで、いくらでも変われるチャンスがあるということを、『恋です!』は教えてくれる。

 冒頭で、ユキコの父・誠二(岸谷五朗)が、「渡る世間に鬼はなし。困ったときに助けてくれる慈悲深い人もいる」と話していたが、第4話ではそれを痛感した。ユキコも、他人を“鬼”だと決めつけずに向き合ったからこそ、バーガーショップに幸せな空気をもたらすことができたのだろう。

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