杉咲花が“目で訴えず”に物語る 朝ドラに続き『恋です!』でも際立つ演技力

『恋です!』杉咲花が“目で訴えず”に物語る

 快活な声が魅力の杉咲花が、今期のドラマ『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系/以下『恋です!』)で演じるのは、弱視であり白杖を頼りに生活する少女・赤座ユキコだ。タイトルの通り、白杖を使う少女がヤンキーと出会いひょんなことから仲を深める様子を描く本作は、杉咲の明るい声の響きと共に繰り広げられる軽快なツッコミも相まって、極上のラブコメディに仕上がっている。ユキコと恋に落ちるヤンキー・黒川森生を演じる杉野遥亮との掛け合いは、早くも秋ドラマにおいて名カップルの誕生を予感させるテンポ感だ。

 杉咲といえば、2021年5月まで放送していた連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)での活躍が記憶に新しい。難波の喜劇女優・浪花千栄子をモデルにしたヒロインの生涯を描いた本作で杉咲は、少女期〜老齢期までの主人公・千代を演じる。面倒見がよく口が達者な千代の姿は、20代前半の女優が演じていたとはとても思えないほどの貫禄とたくましさ。さらに東京出身でありながら大阪弁と河内弁を巧みに使いこなし、シーンに合わせて演じ分ける多才さものぞかせた。その怪演ぶりで杉咲の魅力に開眼した者も多いだろう。そんな杉咲の活躍は止まらない。『恋です!』でもその類いまれな演技力と、テンポのいい芝居でさっそく視聴者を惹きつけているのだ。

 特にそれが顕著に現れるのが、黒川との掛け合いだろう。本来なら誰もが恐れる黒川に動じることのない、勝気なユキコの姿勢に黒川はタジタジ。すっかり恋に落ち、黒豹の牙はあっさりと抜け落ちたようだ。そんな黒川と行動を共にし、時にツッコミ、時に黒川の良さを切々と語るユキコの真っ直ぐな思いは、杉咲の声に乗せて視聴者の心に強く響く。

 本来、役者にとって芝居に欠かせないのが瞳の演技だ。だが、今回ばかりは目で訴えては“見えている”ことになってしまうため、いつも以上に声色や抑揚での表現を重視していることが見て取れる。瞳での表現に制限がありながら、ユキコの心情が痛いほど伝わるその芝居は、新たな境地を切り拓き、女優として何重もの殻を突き破りながらまい進しているようにさえ感じる。自身は目が見えている状態で、ユキコの生きる「光と色がぼんやりわかる」だけの世界を生きていることを表現しているのだ。



インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる