『最愛』を紐解く鍵は、その動機にどんな“愛”が見えるか 梨央と大輝の辛すぎる展開

『最愛』第1話で描かれた3つの愛

 “ながら見”厳禁な、珠玉のサスペンスドラマが始まった。『夜行観覧車』『Nのために』『リバース』とTBSでこれまで湊かなえ原作のドラマを手掛けてきた制作チームが、満を持して完全オリジナルドラマである『最愛』(TBS系)をスタートさせたのだ。

 『最愛』はそのタイトルが示す通り、登場人物たちの様々な愛が丁寧に紡がれていく。人は愛ゆえに強くなり、そして愛ゆえに壊れてしまうもの。愛するものを大切に想うほどに、そして失いたくないと願うほどに、“愛”が持つ言葉とは真逆の行動も厭わなくなる危うさをはらんでいる。どれほど愛しているのかが伝わるからこそ、その反動が待っているのではないかというヒリヒリとした気持ちに目が離せないドラマになっているのだ。

 第1話では、3つの愛が中心に描かれた。1つ目は、朝宮梨央(吉高由里子)と宮崎大輝(松下洸平)の初々しい“恋愛”だ。陸上部男子寮の看板娘と選手という間柄の2人は、まさに青春真っ盛りのキラキラとした日々を過ごす。梨央が大輝に大会の勝利を願って渡した手作りのお守り。それを今度は受験に挑戦する梨央に返す。なかに、手書きのメッセージを添えて。お互いに想いを確信しながらも言葉にするタイミングが掴みきれないもどかしさもまたこの時代の恋愛ならではだ。

 お互いの目標を応援し、その先にある輝かしい未来しか想像できない眩しい時間は永遠に続くように思われた。しかしある嵐の夜、招かれざる訪問者・渡辺康介(朝井大智)によって陰りを見せる。大輝のいない夜に限って、起こってしまったある事件。梨央は大輝の好きな梨央ではいられなくなってしまう。

 その事件の前後で描かれた愛は、梨央の“家族愛”だ。男子寮の寮夫をしている父の達雄(光石研)、そして幼い弟・優(柊木陽太)は、梨央にとってかけがえのない存在。達雄を手伝い寮を明るく盛り上げ、小さなころの怪我によりカッとなると記憶をなくしてしまう優のケアも献身的に行ってきた梨央は、達雄と優にとってまさに「最愛の人」と呼ぶにふさわしかった。お互いを支えに生きてきた仲睦じい家族。その愛情が伝わってくるからこそ、それを壊すきっかけとなった事件が辛くなる。

 嵐の夜、康介に薬をもられたと思われる梨央。引きずられて傷ついたと思われる腕に、康介のと思われる血液が付着した洋服。そして山奥へと何かを埋めに行ったと思われる達雄の姿。その断片的な梨央の記憶と状況証拠のピースを組み合わせていくと、家族が事件に関わっているように思われる。だが、すべてが“思われる”の域を抜けない。しかも、すべてを知ると思われる達雄は、くも膜下出血により急死してしまうのだ。まるで、自らの死をもって、あの夜のことを抹消するかのように。

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