『最愛』を紐解く鍵は、その動機にどんな“愛”が見えるか 梨央と大輝の辛すぎる展開

『最愛』第1話で描かれた3つの愛

 一方で、描かれたもうひとつの愛は、姿を消した康介を探す父・昭(酒向芳)の姿だった。梨央を乱暴しようとした康介を知る視聴者としては、とうてい愛することなんてできない男だが、昭にとってはかわいい息子という切なさ。康介がいなくなった夜から、必死に息子の名前を叫び、情報を求めてさまよい歩く。その愛は15年の時を経ても変わることはなかった。

 あの事件以来、大輝への愛を心の中にしまいこみ、達雄と優への愛を糧に、東京でビジネスを成功させた母・真田梓(薬師丸ひろ子)のもとへと身を寄せた梨央。新薬開発という目標のためだけに生きる梨央は、いまや「世界を変える100人の30代」に選ばれるキレ者の社長となっていた。

 そんな梨央を見つけだし「あのときの寮の子」と叫んだ昭が遺体で発見される。それは康介の白骨死体が見つかった10日後というタイミングだった。そして、奇しくもこの事件を捜査するのが、刑事になった大輝という巡り合わせにも胸が詰まる。

 さらに、康介の遺留品の中にはあの梨央の手作りのお守りと大輝の手書きのメッセージと思われる紙切れが。愛情の証だったものが、愛した相手を追い詰めるアイテムになってしまうのも辛すぎる展開だ。

 すっかり変わってしまった初恋相手を前に戸惑いを隠しきれない大輝。その傍らには、敏腕弁護士の加瀬(井浦新)の姿も。単なる雇われ弁護士とは思えないほど、親身になって梨央を守ろうとする加瀬にも、また彼なりの愛を感じずにはいられない。

 果たして、渡辺親子を殺したのは誰なのか。需要参考人となった梨央が自らの保身のために殺害したという線も十分ありうる。だが、70歳とはいえ男性の昭を梨央がひとりで殺害し、遺棄することは容易ではなさそうだ。

 では、梨央を愛する加瀬や成長した弟の優が手を貸したのだろうか? もしかしたら、真田ホールディングスの後継者とされる梨央に対して不審な動きを見せる専務の後藤(及川光博)が手を回して失墜を狙ったという可能性も。はたまた、全てを知った母・梓が梨央を守るために始末していてもおかしくはない。

 犯人が誰なのかはもちろん、その動機の部分にどんな“愛”が見えるのか。ここから考察が盛んに行われていくシーズンが始まると思うと、新たな楽しみにワクワクする。

■放送情報
金曜ドラマ『最愛』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:吉高由里子、松下洸平、田中みな実、佐久間由衣、高橋文哉、奥野瑛太、岡山天音、薬師丸ひろ子(特別出演)、光石研、酒向芳、津田健次郎、及川光博、井浦新
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子
編成:中西真央、東仲恵吾
主題歌:宇多田ヒカル(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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