『イカゲーム』製作秘話をキャスト&監督らが語る 「サンウはただ冷徹なだけの男ではない」
韓国発のNetflixオリジナルシリーズ『イカゲーム』は、2021年9月に配信がスタートするや全世界を巻き込む社会現象的ヒットとなった。早くも『イカゲーム』ロスがささやかれる中、米Netflixの公式YouTubeチャンネルでは、出演者&スタッフが作品の裏側を明かすコメンタリー映像が公開されている。
映像に登場したのは、監督・脚本のファン・ドンヒョクをはじめ、ソン・ギフン役のイ・ジョンジェ、チョ・サンウ役のパク・ヘス、そして美術監督のチェ・ギョンソンの4人。ドンヒョク監督は『トガニ 幼き瞳の告発』(2011年)などでも知られ、ギョンソンも『マルモイ ことばあつめ』(2019年)、『EXIT』(2018年)などの話題作に参加している気鋭のクリエイターだ。
2008年ごろから『イカゲーム』を構想していたというドンヒョク監督だが、実現に向けて本格的に動き出したのは、それから約11年後の2019年。当初は映画の予定だった脚本には、ドラマシリーズに変更する段階で大幅な改稿が加えられたといわれている。
今回の映像にて、ドンヒョク監督は、ギフンとサンウを演じる俳優には当初からジョンジェとヘスを考えていたと明かしている。一方、カン・セビョク役のチョン・ホヨン、アリ・アブドゥル役のトリバティ・アヌファム、オ・イルナム役のオ・ヨンスは「最高のキャスティングをするために最適な俳優を探した」結果の抜擢だったとのこと。
セビョク役のホヨンはオーディションで発見し、監督いわく「見た目からイメージ通りで、神様からの贈り物だと思った」。アリ役のアヌファムについては、「韓国では外国人の良い役者を見つけるのが難しいが、彼は韓国語が堪能で、情緒的な芝居が本当にうまかった」と称賛している。
当初、ジョンジェはギフン役を「どれだけバカバカしく演じるべきなのか」と悩んだと語る。「命がけのゲームにユーモアを取り入れられるのか、しかしユーモアがなければ、ほかのサバイバル・ゲームものと一体どのように差別化を図るのか。そんなことを監督と話した」というのだ。ドンヒョク監督とジョンジェは、話し合いを重ねることで、視聴者に愛され、応援される人物像を作り上げていった。
例えば第1話の競馬場でのシーンを、ジョンジェはほぼ、アドリブで演じている。慌てているギフンはセビョクにぶつかるが、彼女のコーヒーを拾う。このワンショットにギフンという男の優しさなど細かい要素が描かれていると監督は説明。しかし、彼が拾ったコーヒーにストローを指す指示は脚本になかったものだ。本編を見ながら、ジョンジェは「彼女(ホヨン)、笑ってるよね(笑)」と指摘。よく見ると、たしかに肩が震えている。「これはボツのテイクだったけれど、捨ててしまうのはもったいなかった」と、ドンヒョク監督は語った。ちなみに、ギフンと野良猫のシーンもジョンジェのアイデアから生まれたものだという。このような細やかな描写が、ギフンという人物を象徴するのだ。