『D.P.』『イカゲーム』『愛の不時着』 社会問題描く韓国人気作品が投げかけるメッセージ
「何かしないと、何も変わらない」
とは、Netflixで配信された韓国ドラマ『D.P. -脱走兵追跡官-』で放たれる印象的なセリフだ。今、多くの視聴者の心を掴む韓国ドラマには、社会に潜む闇を痛烈に批判する作品が珍しくない。たとえ、それが韓国内のカルチャーを指していたとしても、その根本的な問題は人間ならば誰しも覚えがあったりする。
ずっとこうしてきたから。こういうものだから。自分だけが動いても何も変わらないから……そう諦めてきた何かがどの国にも、どの世代にもあるように思う。でも、それでいいわけがないと気づいている人もいる。その使命感が共鳴するように「何かしないと、何も変わらない」の「何か」になる作品を次々と生み出されている印象だ。
K-POPなどの人気をきっかけに、韓国は世界中から注目を集める国の一つになった。だが、その文化や歴史について詳しく理解できているかと聞かれると、こんなにも近い日本に住んでいても自信を持って「はい」とは言えない。
だからこそ、大ヒットを記録した映画『パラサイト 半地下の家族』では、富裕層と貧困層の格差がこれほどあるものかと驚かされた。どれほど学力や才能があっても、数少ないチャンスを逃してしまったら半地下の生活から抜け出せない閉塞感。日本では今「親ガチャ」なんて言葉が話題になっているが、まさに「ガチャガチャ」のように人生が運ひとつで決まってしまうやるせなさと憤りが、この作品には渦巻いていた。
そして現在、Netflixのランキングで1位を独走しているドラマ『イカゲーム』でも、公平なチャンスを得られない社会的弱者にスポットライトが当たる。物語そのものはこれまで様々な作品で描かれてきたデスゲーム。だが、そこに韓国の昔遊びや格差問題が組み込まれることでこの社会がはらむ理不尽さが際立つ。お金がない者とお金があり余るもの者、どちらも生きることに絶望した世界の生きづらさ、多くの犠牲の上に手に入れた富が本当の幸せかどうかを突きつけるのだ。
また、Netflixで2020年代にランキング上位をキープし、最も話題になったドラマ『愛の不時着』でも、韓国と北朝鮮との行き来が命がけであることを再認識させられた。もともと同じ国、同じ言語を話しているにも関わらず、分断されてしまった悲しい歴史。家族であっても離れ離れになってしまった過去がある。“好きな人と一緒にいたい”そんなシンプルな想いが叶わないほど複雑な事情が、果たして健全な社会なのかと一石を投じる作品だ。