『おかえりモネ』鈴木京香、言葉の中に宿る説得力 母親役でみせた円熟味
鈴木の朝ドラ出演は、ヒロイン役を務めた『君の名は』、『わろてんか』に続き本作が3作目だ。
鈴木といえば、品の良さの漂うしっとりと落ち着いた正統派美人なのは言わずもがなだが、三谷幸喜作品『王様のレストラン』(フジテレビ系)、『華麗なる一族』(TBS系)などで演じた悪女役の印象が当初は強かった。『セカンドバージン』(NHK総合)では、離婚後仕事一筋で生きてきた出版業界の辣腕プロデューサーが年下男性と恋に落ちる甘くて危険な恋路を艶やかに見せてくれた。『共演NG』(テレビ東京系)での大物女優役も時折顔を覗かせる悲哀が観る者の胸を不意に突いた。
『グランメゾン東京』(TBS系)での三つ星レストランを目指して夢を追うフランス料理のシェフ役では、これまで演じてきた強くて少し高圧的な女性像ではなく、挑戦者としての心意気と覚悟、がむしゃらな姿が新鮮に感じられた。そう考えると、本作のように鈴木が穏やかな一般的な家庭の母親役を演じるのは珍しく、久々に思える。しかし、亜哉子の決して長くはない言葉の中に宿る説得力や覚悟、果てしなく広くて深い包容力は、経験値からくる円熟さと、優しさゆえの力強さにある。
百音の前に突然現れた中学生のあかり(伊東蒼)は、亜哉子と何か繋がりがあるようだが、これまでいつだって気丈に振る舞ってきた亜哉子のどんな胸の内が明かされるのか。おそらく震災も関わってくるだろう彼女がこれまで蓋をしてきた記憶の中にはどんな光景が広がっているのか、そっと受け止め引き受けたい。彼女が今まで周囲に対してそうしてきたように。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK