『ひぐらしのなく頃に卒』沙都子と梨花が共依存から脱却する物語に 別作との繋がりも

 沙都子と共に聖ルチーア学園へ進学したい梨花、勉強が嫌いで梨花とは雛見沢でずっと遊んでいたい沙都子。両者が一歩も譲らなかったのは、そこの根底に「距離が離れてしまったら、親友ではいられなくなる」という不安があったからだろう。そんな二人を本当の意味で救ったのは、やはり圭一たちだった。

「ずっと一緒にいることは決して定めなんかじゃない」(レナ)
「家族でさえ別離は訪れる。でもね、それが二人の関係の終わりなんかじゃない」(魅音)
「(親友の定義は)自分も相手も、絶対親友同士でいてくれると互いに信じ合えること」(圭一)

 そんな彼らの言葉を聞き、梨花と沙都子は互いにそっぽを向いたまま手を繋ぐ。たとえ離れたとしても、親友には変わりない。そう信じることができたからこそ、二人は別々の道を進む決意をしたのだろう。『ひぐらしのなく頃に』業と卒は、梨花と沙都子が互いへの依存から脱却するまでの物語であり、最後に本シリーズの代表曲の一つである「you」の“卒業ver.”が二人の旅立ちを彩った。

 また、新幹線で梨花が旅立つ場面で、沙都子と交わした台詞が話題に。

「あんたが北へ行くなら私は南へ」「東へ行くなら私は西へ」

「いつか会えるわ」「すぐに会えるわ」

「また"何か"がなく頃に」

 エウアが何気なく口にした“魔女”という言葉をきっかけに、同じく「07th Expansion」製作の『うみねこのなく頃に』との繋がりが噂された本作。この梨花と沙都子の台詞は、同作で魔女ベルンカステルとラムダデルタが別れを告げる際に交わした言葉と同じだった。以前より梨花と容姿が酷似しているベルンについては、“繰り返す者”としての人格が古手梨花から分離し、それが魔女化した存在と言われている。そして本作の終盤で沙都子の別人格が、本来の沙都子に対して「あんたにあんたを返すわ」と告げているため、梨花と同じく沙都子から分離した人格もラムダになるのではないかと考察されているようだ。

 ただ、Febriでのインタビューで原作者の竜騎士07は、『ひぐらし』も『うみねこ』もそれぞれの作品で完結していると答えた上で「『うみねこのなく頃に』を知っていると“また少し違った視点での考察ができて面白いんじゃないか?”という程度のものなんです」と明かしている。(参照:ひぐらしのなく頃に業 原作・竜騎士07インタビュー)要所に散りばめられたヒントは視聴者が作品をまたいで考察を楽しめる、『なく頃』にシリーズならではの演出だったと言えるだろう。

 賛否両論を呼んだ令和版『ひぐらしのなく頃に』は幕を閉じたが、本シリーズは視聴する度に新たな発見がある作品だ。謎が解ききれず、不完全燃焼に終わった人はぜひとも平成版のひぐらしや、“なく頃に”シリーズの他作品を踏まえた上でもう一度本作に挑んでほしい。

■放送情報
『ひぐらしのなく頃に卒』
TOKYO MX、BS11にて、 毎週木曜23:30~放送
サンテレビにて、毎週木曜24:30~放送
AT-Xにて、毎週金曜21:30~放送
dアニメストア、ひかりTVにて、毎週木曜23:30〜配信
原作:竜騎士07/07th Expansion
監督:川口敬一郎
シリーズ構成:ハヤシナオキ
キャラクターデザイン:渡辺明夫
音楽:川井憲次
アニメーション制作:パッショーネ
声の出演:保志総一朗、中原麻衣、ゆきのさつき、かないみか、田村ゆかり、茶風林ほか
(c)2020竜騎士07/ひぐらしのなく頃に製作委員会
制作:ひぐらしのなく頃に製作委員会
公式サイト:https://higurashianime.com/
公式Twitter:https://twitter.com/higu_anime

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる