“出題編”の『業』から“解答編”の『卒』へ 『ひぐらしのなく頃に』はどう着地していくのか

 裏切られた……! 変わらない友情を誓い合ったのに。そんな愛憎渦巻く感情のまま、親友への復讐に燃える少女・北条沙都子の凶行が描かれるテレビアニメ『ひぐらしのなく頃に 卒』(以下『ひぐらし卒』/2021年)の放送が始まった。前作にあたる『ひぐらしのなく頃に 業』(以下『ひぐらし業』/2020年)は、本編中で起きた多くの惨劇の真相が謎のまま終わった“出題編”だが、親友の古手梨花との仲に断絶を感じた沙都子が、自分を絶望へ追いやった梨花への仕返しに動き出す『ひぐらし卒』は、さしずめ前作の“解答編”となる。

『ひぐらしのなく頃に 卒』
『ひぐらしのなく頃に 卒』

 ここで『ひぐらし業』、『ひぐらし卒』の原作の概略に触れておこう。竜騎士07が代表を務める同人サークル『07th Expansion』から2002年に発表されたノベルゲーム『ひぐらしのなく頃に』は、都会から離れた雛見沢村という架空の村で起こる猟奇殺人や失踪事件の真相を紐解いてゆく内容。のちにプレイヤーの口コミや商業誌に取り上げられたことで知名度が上昇した。このホラーミステリーゲームを原作に2006年から2013年にかけてテレビシリーズとOVAでアニメ化され、コミカライズ(漫画化)、実写映画化、ノベライズ(小説家)とマルチメディア展開を見せている。2020年には7年ぶりの新作アニメ『ひぐらし業』が2クールのテレビシリーズとして始まった。小中学校併設の分校に通う前原圭一、竜宮レナ、園崎魅音(以上、中学生)、古手梨花、北条沙都子(以上、小学生)の5人と、その親族が物語に絡む。5人によって紡がれる明るくコミカルな日常描写と、村社会の因習に根差す猟奇殺人のダークなギャップが魅力となって、多くのファンが事件の考察に熱をあげているのだ。

 『ひぐらし業』では、沙都子にいつまでも変わらぬ友情を約束した梨花が、共に同じ高校に進学したいと願ったことから、2人は猛勉強をして名門のお嬢様学校・聖ルチーア学園に入学したものの、優等生の梨花がすぐ校風に馴染んで多くの友人に囲まれているのに対し、もともと勉強嫌いだった沙都子は孤立して落ちこぼれになっていた。自分は梨花と一緒にいられればそれで良かったのに、苦手な勉強をしてまで聖ルチーア学園に入学した意味は何だったのか? 沙都子のやり場のない怒りと屈折した友情は、いつまでも梨花を雛見沢村に縛りつけて、自分と仲良く暮らし続ける世界を作れば良いのだという考えに発展する。

 『ひぐらしのなく頃に』には、作品世界を形作る重要な設定がいくつかあり、そのひとつが雛見沢症候群という風土病である。発症すると不安、妄想、猜疑心に駆られ、やがて錯乱の末に狂暴化する。血が出るまで爪で搔きむしるほどの痒みが首筋に出るのも特徴だ。梨花は雛見沢症候群の発症者によって自分が殺される昭和58年(1983年)の人生を回避するために、何度も時間を巻き戻してループの輪の中に生き続けているキャラクターとされている。

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