『男女7人夏物語』『WATER BOYS』など、夏の青春ドラマは過去の遺物に?

「青春ドラマ」が消える夏

 8月31日。ロックバンド フジファブリックの代表曲「若者のすべて」が来年の高校教科書に掲載されることが発表された。「若者のすべて」は2008年に発表された最後の花火大会の終わりに夏の終わりを重ねた名曲だ。2010年代に様々なミュージシャンやアイドルがカバーしたことで注目され、夏の代表曲として定着していった。

フジファブリック (Fujifabric) – 若者のすべて(Wakamono No Subete)

 この曲を聴くと真っ先に思い出す青春ドラマがある。2013年に放送された『SUMMER NUDE』(フジテレビ系)だ。脚本は『コントが始まる』(日本テレビ系)の金子茂樹。山下智久、香里奈、戸田恵梨香、勝地涼、窪田正孝、千葉雄大、山本美月、橋本奈々未、長澤まさみといった豪華キャスティングが印象に残る本作は、海辺の町を舞台にしたひと夏の物語だ。

 劇中に登場する映画や音楽がドラマ本編とリンクする使い方が絶妙で、もっとも印象的だったのが「若者のすべて」がラジオから流れる場面だ。そもそも本作のタイトル自体が、真心ブラザーズが1995年に発表した曲「サマーヌード」からの引用となっている。主題歌も山下智久によるカバー曲「SUMMER NUDE ’13」だったのだが、「若者のすべて」も「サマーヌード」も「最後の花火」が夏の終わり(と恋の終わり)の象徴として扱われており、終わる寸前に感じる「一瞬の永遠」とでも言うような瞬間を切り取った名曲だった。

 この、終わりそうで終わらない止まった時間を生きているような感触こそが、日本人が夏という季節に抱く普遍的な実感なのだろう。だからこそ、これまで夏を舞台にした青春ドラマがたくさん作られてきたのだが、今年の夏クールを振り返ってみると、友情や青春を描いた夏ドラマが全くなかったことに驚かされる。少子化にともなう視聴者の高齢化もあってか、10代の若者が主人公の学園青春ドラマは年々、減少傾向にあった。

 『SUMMER NUDE』の主人公も20代後半で、10代から引き伸ばされてきた長過ぎた夏(青春)をどうやって終わらせるのかという変化球の青春ドラマだった。おそらく近年の青春ドラマは、当事者である10代の学生ではなくかつて若者だった大人に向けた懐古的なものになりつつあるのだろう。

 3カ月(1クール)ごとに放送されるテレビドラマは、春夏秋冬ごとに最新作を作ってきた。トレンディドラマの雛形となった『男女7人夏物語』(TBS系)、『男女7人秋物語』(TBS系)のタイトルに夏、秋といった四季が織り込まれているのが象徴的だが、クリスマス、バレンタイン、入学、卒業といった季節ごとのイベントを劇中に盛り込むことで、テレビドラマは視聴者を作品世界にいざなってきた。

 青春ドラマもそれは同様で、7~9月のドラマだったら、物語の舞台は「夏休みから2学期」にかけてとなっている。

 人気映画の続編として作られた男子シンクロナイズドスイミング部の青春を描いたドラマ『WATER BOYS』(フジテレビ系)もそれは同様で、だからこそ「夏の始まり」が友情や恋のはじまりと重ねて描かれてきたのだ。



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