松岡昌宏が真実と向き合う“再生”のドラマ 『密告はうたう』シリーズ化への期待

松岡昌宏が真実と向き合う“再生”のドラマ

 とある差出人不明の封筒が届く。そこにはある警察官が不正をはたらいているとの文字が。この密告は事実なのか、それとも誰かの策略か――。

 松岡昌宏主演の『連続ドラマW 密告はうたう 警視庁監察ファイル』(全6話)の最終話がいよいよ9月26日に迫っている。1話から5話まで全てWOWOWオンデマンドでアーカイブ視聴可、また同日の朝8時からは見逃し一挙放送も控えているので、最終話にもまだ追いつける。

 警察は市民にとって正義を守る砦。しかし、その警察の正義を守るのは誰か。その答えが「警察の中の警察」とも称される警視庁人事一課監察係(通称:ジンイチ)。この物語の舞台となる組織だ。

 近年「警察モノ」といえば仲間を信じて突き進むバディものが人気だが、このドラマでは全員に対して疑うことからスタートする。圧倒的な上下関係と横の繋がりによって屈強なスクラムを組み、社会の悪に立ち向かっていくはずの警察。しかし権力のあるところには政治がつきもの。その内部が淀み腐っていくことのないように目を光らせていく必要がある。

 とはいえ、誰もが疑われ、身辺を探られたくはないもの。ジンイチの掲げる目的は理解しているものの、常に疑いの眼差しを向けてくる彼らに対して警察内部からの風当たりは強い。ましてや不正の証拠を見つければ、それは警察の不祥事という大きな問題にもなるというから難しい。成果が上がっても誰からも喜ばれることはなく、かつての仲間からも疎まれ敵視される、実に孤独な仕事だ。

 しかし、そうした義理や感情を抜きにしたフラットな眼差しの先に見えるものがあるのではないか。世の中を長く生きていれば白と黒ばかりではない。濃淡の異なる無数のグレーも存在していることを知っている大人にこそ響くハードボイルドなサスペンスドラマだ。

役者・松岡昌宏の振れ幅に脱帽

 そんな本作で松岡が演じるのは、かつて捜査一課の刑事として快活に活躍していた佐良正輝。後輩の斎藤康太(戸塚祥太/A.B.C-Z)の殉職をきっかけにジンイチへ異動となった男だ。斎藤が殉職をしたのは、佐良が斎藤と斎藤の婚約者である皆口菜子(泉里香)と共に、とある殺人事件の情報のウラを取るべく極秘捜査に繰り出していたときのことだった。

 斎藤が命を落としたのは自分の判断ミスのせいではないか。佐良と皆口はお互いに自分を責めながらも、同時に情報が漏れた理由は相手の裏切りではないかという疑いを持つ。さらに、皆口は刑事畑から飛ばされて運転免許試験場勤務となったのに、佐良だけジンイチへの「栄転」という居心地の悪い展開に、それぞれの思いはさらに複雑になっていく。

 「後輩を見殺しにしたのに」と陰口を叩かれながらも警察を辞めずにいた佐良は、別人と言われるほどやつれていた……という一文を体現化したように、松岡の表情は暗く肌ツヤも悪い。捜査一課で刑事だったころの表情は、私たちが知る松岡そのままのハツラツとした姿であるにも関わらずだ。一度大きな絶望を味わった人間は、話し方も自信なさげになり、判断力も著しく低下する。そんな歯切れの悪くなってしまった佐良を松岡が丁寧に演じていく。

 だが、ジンイチとして皆口の行動確認をしていくうちに、その表情は少しずつ変化。そして、過去の未解決殺人事件の犯人、さらには斎藤の死の謎にも近づいていくと、光を失った眼をしていた表情が、腹をくくりまっすぐと闘志を燃やす眼差しへと変わっていくのは見事だった。

 警察内部に渦巻く疑惑に立ち向かう痛快サスペンスでもありながら、佐良という一人の男が再び自分の目で真実と向き合おうとする「再生」のドラマでもあるところに、本作のどっしりとした見応えを感じられる。

 松岡は特別ガイド映像「密告はうたう 完全解剖ファイルIII/制作舞台裏後編」で、本作の撮影を振り返って「なんかスタートしたころを思い出しました。自分が芝居をやらせてもらいだしたころ。そんな中でジンイチのシーンだったもんですから、苦しさ、怒り、切なさ、儚さみたいなものが素直に出せたかなっていう気がします」と語っている。

密告はうたう 完全解剖ファイルIII/制作舞台裏後編【WOWOW】

 松岡にとって初のWOWOWドラマ出演となる本作。株式会社TOKIOという新たな一歩を踏み出したばかりのタイミングでもある。完成報告会見では「今まで経験したことのないお芝居でしたので、手探りもあったんですけど、本当に心に残る作品になったと思います」(参考:戸塚祥太、『連続ドラマW 密告はうたう』で先輩・松岡昌宏と初共演し「これがスターか!」と尊敬 | ぴあエンタメ情報)と思い入れを語っていたのが印象的だった。

 佐良が警察という仕事への誇り、意地、そして正義感を取り戻していったように、松岡自身もこの作品を通じて改めて役者としての自分自身を見つめ直す作品となったのではないだろうか。

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