『密告はうたう』内片輝監督、松岡昌宏に“大きな安心感” 「人間的な魅力に溢れる人」
数々の重厚な作品を世に送り出しているWOWOWの「連続ドラマW」。最新作『連続ドラマW 密告はうたう 警視庁監察ファイル』は、「警察の中の警察」とも称される警視庁人事一課監察係(通称ジンイチ)にフォーカスを当てた伊兼源太郎による傑作警察ミステリーをドラマ化した作品だ。
そんな本作で、ある事件の捜査中に後輩刑事を殉職で失ったことから、人事一課へ異動となった主人公・佐良正輝を演じているのが、「連続ドラマW」初出演となる松岡昌宏だ。いままで見せたことがないような松岡の佇まいをはじめ、これまでとは一味も二味も違う“警察ドラマ”を手掛けた内片輝監督が、本作でこだわった演出や、俳優・松岡昌宏の魅力を語った。
どんなことをしているのか知られていない“警視庁人事一課”が舞台
――警視庁人事一課という、あまり耳慣れない部署が舞台の物語。これまでも内片監督は刑事ドラマを数多く手掛けてきましたが、この題材にはどんな印象を持ちましたか?
内片輝監督(以下、内片):刑事ものの作品というのは、所轄か本庁かの違いはありますが、ほとんどが刑事事件を扱うものが多いですよね。あとは公安ものなどもありますが、人事一課というのは、ほとんどどんなことをしているのか知らない。お話をいただき原作を読んだとき、すごく面白く、これはドラマとしても魅力的なものができるなと感じました。
――演出をする上で、これまでの刑事ドラマとの差別化をどのように考えて臨んだのでしょうか?
内片:一番の特徴は、監察対象となる相手が一般人ではなく警察内部の人間であるということ。取り締まりをする立場の人間を取り締まるという意味では、プロ同士のやり取りなんですよね。腹の探り合いではないですが、そういった緊張感が伝わればと思って撮影に入りました。もう一つ、内容的な部分では、派手な殺人事件を捜査するわけではなく、アクション的な大捕り物も出てこない。じっと張り込んだり尾行したりという、観ている側からすると、地味になってしまいがちなところがあるので、一瞬でも目を離したら何かが起こってしまうかもしれないという緊迫感のある演出は心がけました。その意味で、俳優さんたちの一挙手一投足に集中して見てもらえるようなお芝居だったり、音楽にもこだわりました。
松岡昌宏、俳優としても力量の高さは「大きな安心感」
――主演を務めた松岡さんとは初めてご一緒したとお聞きしましたが、撮影前はどのようなことを期待されていましたか?
内片:松岡くんは、これまで数多くの作品に出演していて、いろいろな魅力を持った俳優さんだなという認識はありました。今回の役柄や作品の世界観を考えると、普通に格好いい松岡くんではもったいないと思ったので、いままで観たことのないような松岡昌宏が出ればいいなという期待を持っていました。これまでもジャニーズ事務所の俳優さんとご一緒したことはありましたが、現場に対するストイックさや、パフォーマーとしてのフィジカルな表現力や表情を含めて、僕の中では皆さんとても高いポテンシャルを持っているという認識でした。その意味で、松岡さんもこちらが期待するパフォーマンスを見せてくれるだろうなとは思っていました。
――実際、ご一緒していかがでしたか?
内片:役者としていろいろな作品に出演しているのは伊達じゃないですよね。テクニカルな部分を含めて、手練れのベテラン役者という印象でした。普段バラエティなどでも活躍されているので、なんでもできるマルチな方というイメージがありますが、俳優としても力量の高さは、大きな安心感でした。こちらの要求に対して「分かりません、できません」ということは一切ない。台本やキャラクター、演出に対する理解が深く、瞬時に意図を理解してフィジカルに反映できる。一流だなと感じました。
――お芝居以外の部分はどうでしたか?
内片:そちらに関してもプロですよね。キャストやスタッフに対しても心遣いができ、主役を張るに足る人だなと。現場って混沌として大変なことが多い。特にいまはコロナ禍で普段よりもスケジュール的にも厳しいことも多いですが、彼は例えば10年以上前に現場で一緒になった照明の若いスタッフのことも覚えていて積極的に声を掛けるなど、人間的な魅力に溢れていて、みんなに好かれていました。真面目で一生懸命。こういったことって、当たり前に見えて、実際やるのってすごく難しいんですよね。そんな彼も、撮影が終わった瞬間、クタっと弛緩した表情になるんです。そんな部分も人間らしく素敵だなと思いました。