『漂着者』女児失踪事件の真相が明らかに ヘミングウェイの「パンドラの箱」とは?
※以下の文章には『漂着者』本編の内容に関する記述が含まれます。
『漂着者』(テレビ朝日系)もいよいよ大詰め。いくつもの謎が現れては消え、物語の行方は混沌としてきた。伏線と思われたものが消失し、忘却の彼方に追いやられる。そうかと思えば、消えたと思っていた手がかりが突如として表面に浮上する。県警の柴田(生瀬勝久)が「はやりの伏線回収しないサスペンスドラマだったら、お前か俺が犯人かもしれねえぞ」と同僚の野間(戸塚純貴)をどやしたように、このまま伏線が回収されず、謎が謎のまま「眠らせておくべき真実」として埋もれてしまう可能性もあった。
だがそれは杞憂だった。『漂着者』第8話では、謎が急ピッチで巻き上げられ、本作が伝えようとするものの正体が姿を見せた。それを明らかにする前に、まずはヘミングウェイ(斎藤工)が描いた2羽の鳥について説明する必要がある。捜査一課の佐々木(岩谷健司)の娘・一恵が誘拐され、連続女児失踪事件との関連が疑われた。旧知の佐々木の力になりたいと、新聞記者の詠美(白石麻衣)は、手がかりを求めてヘミングウェイの元へ。そこでヘミングウェイが描いたのが、2話の鳥が嘴を交えて向かい合うイラストだった。
結論から言えば鳥の正体はトキで、イラストは和菓子店「嘴屋」の屋号を表すロゴだった。警察は現場付近の監視カメラに映ったニセ警官を怪しいと考え、ニセ警官が脚を引きずっていたことから犯罪歴と病院のカルテをたどる。そこから、嘴屋の関川進(阿部亮平)に行き当たり、関川が色情盗で過去に逮捕されていたことや住職の深見(リリー・フランキー)との関係が明らかになる。当初、県警は一恵の誘拐を連続失踪事件の模倣犯と考えていたが、真相はシリアルキラーによる犯行だった。
謎に包まれた『漂着者』で女児失踪事件はドラマ序盤で大きく取り上げられたが、その後は第6感の遺伝子とヘミングウェイの出自をめぐりストーリーが展開する中で、次第に脇に追いやられた。あたかもそれは、ヘミングウェイの予知能力を証明するためにしつらえられたエピソードにも見えた。しかし、女児の葬儀会場に現れたナンバー2174の車や、ヘミングウェイの力によって救出された遥香(鈴木結和)の両手を交差するポーズなどいくつか気になる描写もあった。
それがここに来て、出番の少なかった深見との関係も含めて物語の太い幹としてクローズアップされたことは、ミステリードラマとしての本作の立ち位置を示しているように思われる。同時に意図的なミスリードと考えられた某国の工作員という筋がドラマ終盤で急浮上したわけで、『漂着者』は現代に出現した預言者をめぐって同時進行する複数のストーリーが連なったもの、と考えると腑に落ちる。