日本のTVドラマは新しい家族のロールモデルを描けるか? 『#家族募集します』の最終的な選択に注視

『#家族募集します』最終的な選択に注視

 寮、下宿、ルームシェア、シェアハウス。言い方や形態は様々だが、見ず知らずの他人が一つ屋根の下で共同生活をおこなう様子を描いた物語は昔から多く存在する。現在、放送されている『#家族募集します』(TBS系)もその一つだ。

 主人公は絵本会社に勤めるシングルファーザーの赤木俊平(重岡大毅)。3カ月前に妻を亡くした俊平は娘にそのことを言えず、家事と仕事に追われていた。そんなある日、お好み焼き屋にじやに住み込みで働いている幼なじみの小山内蒼介(仲野太賀)と再会する。

 蒼介はにじやの2階の空き物件を家賃収入に当てるため共同生活をする同居人を募集していた。タイトルの「#家族募集します」とは、蒼介がSNSで入居者の募集を投稿した際のハッシュタグのこと。やがてにじやには、小学校教員で娘のいる桃田礼(木村文乃)、シンガーソングライターで息子のいる横瀬めいく(岸井ゆきの)、そして俊平の3人が集うようになるのだが、面白いのは3組とも子連れのシングルだということ。

 例えば前クールに放送された『着飾る恋には理由があって』(TBS系)は、シェアハウスを舞台にした恋愛ドラマだったが、インフルエンサー、料理人、アーティストの卵といった「若者が集う場所」としてシェアハウスは描かれていた。

 夢を追いかける若者が一時期だけいっしょに暮らし、結婚して家族が出来ると出ていくモラトリアム空間というのが共同生活ものの定番なのだが、『#家族募集します』ではシングルが集う場所となっている。

 蒼介はにじやを学童保育とシェアハウスを合体させたような「子育てをシェアする」みんなの家にしようと考える。そして、「一時保育も大歓迎」「手ぶらでどうぞ」「24時間対応」「シングル優遇」「家賃相談」「今すぐ大歓迎」といったハッシュタグと電話番号を付けてSNSで募集するが、簡単にはうまくいかない。

 仕事で学校に呼び出された桃田は、急遽にじやに子どもを預けようとするが、その際に「無認可」「保育士がいない」だったため、一度は断るのだが、これは当然だろう。

 にじやには近所の人々が集まっており、地域共同体が子どもたちの面倒を見るという意味では理想的な場所だが、子どもに何かあった時に「誰がどう責任をとるのか?」が難しいため、家族連れのシェアハウスというのはなかなか成立しない。

 『#家族募集します』は、信頼関係を作るということでこの難題を乗り越えようとする。劇中では新しい同居人が登場するごとに考え方がぶつかるのだが、本作を観ていると家族連れだとシェアハウスの難易度が一気に上がることがよくわかる。

 同時に相互扶助の関係が一番求められているのもまた「家族なのだ」ということが痛いほど伝わってくる。特にシングル世帯は、仕事のトラブルが起こると子どもがすぐに一人ぼっちになってしまうため「24時間いつでも預けられる場所」が求められる。楽しく描かれているが、本作のテーマはとても切実なもので、だからこそ最終的に俊平たちがどのような選択をするのかとても気になる。

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